オフロバデノデキゴト

「御門さん、他にかゆいとこはー?」
「ない、かな…うん」

 わしゃわしゃと御門さんの頭を洗いながら聞けば、どこか遠くを見るような目をして御門さんが答えた。風呂に入ってからずっとこうだ。話し掛けたとしても、数秒の間があく。
 入る前は普通だったんだけど、なぁ。なんでだろ、と首を傾げながらシャワーで泡を流していく。
細い茶の髪に指を滑らせてゆっくり丁寧に。御門さんの髪は触りごこちがよくて、結構気に入ってるし、痛ませたくない。
 ちなみに。ナゼに俺が御門さんと一緒に風呂に入ってるかと言いますと。


『千里くん、お風呂わいたから…お先にどーぞ』
『え、御門さんからどーぞ。俺、部屋借りる側だしっ』
『何言ってるの…俺が我儘言って住んで貰ってるんだから…』
『でも…』
『ね?』
『……』
『……』
『あ、なら一緒に入ろうっ!』
『…ああ、それいいね………え?』
『うん、節約にもなるし。決まりねー。はい、脱いで』
『え、あ、えっ?』


 俺が押した結果だったり。いや、だってあのままだったら絶対どっちも入らなかったって。
 明日からどうしよ……。多分、明日も同じような事になるだろうし。

「……あ、御門さんさー」
「ん?」

 いい事思いついた。多分、若干の抵抗はあれどきっと最終的には了解を出してくれるはず。いちいちこんな事で譲り合うのも、面倒だしな。

「風呂、俺がいる間は一緒に入りません?」
「………え?」

 部屋借りてる俺が先に入るのはイヤだし。でもきっと、目の前でじっとシャワーをかけられてる人は俺に譲ろうとすりだろうし。
 それを考えたら、コレが一番の案だと思うわけデス。
 人の頭を洗うの、何げに楽しいし。これはこれで良いだろ。

「せ「あ、御門さんに拒否権ないから」
「……はい」

 うん。この共同生活、結構気に入ったかも。


end

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