ハジマリノオハナシ

 辺りには蝉の鳴き声。
 夏特有のソレは、少しばかり耳障りで、あまり好めるようなものではない。
 特に、今のように暑い中大きな荷物を肩に地図を見ている時は。

「……ココを、左……真っすぐいって、突き当たりを右?」

 乱雑に簡略化された地図の道と、目の前に続く道を照らしあわせながら歩く。
 時折、その紙に書かれた目印と間違ってはいないかを確認しながら。

「コンビニがあるから、そこの角を曲がって……」

 言葉に出しながら、そのとおりにコンビニの角を曲がり顔をあげる。

「……ここか」

 額に浮いた汗を拭って、視線をあげた先には、淡い色の小さな、アパートが建っていた。


end

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