会長と生徒会!

Case1:副会長と一緒!

 目の前に積み重なった書類は、全て今日中に終わらせないといけないものばかり。面倒だが、とりあえず上から順に処理をしていこうと、手を伸ばす。

「……あ?」
「どうかしたの?」

 一番上に置かれていた紙面に、思わず声を出してしまった。その声に反応したのは、横の席で同じように書類を片付けていた牧原。不思議そうにする奴に、手招きをする。

「コレ、見てみろ」
「うん?」

 近寄ってきた牧原に手にしていた紙を渡した。転校生が来るから、副会長に案内をさせろという内容だった。そこまではいい。問題は貼りつけてあった写真だ。

「……まだ十代なのに大変だな」
「?……話が見えない。いつも言うけど主語を忘れてるよ、橘。」

「いや、そいつヅラだろ?」
「ヅラだね、どう見ても」

 見るからに人工的な黒いもじゃもじゃ頭。そんなのを被るぐらいだ。理由があるんだろう。

「若いのにハゲちまったから、それを隠したいんだろーな。案内する時はそれに触れてやるなよ」
「ぶっ!」

 可哀想だから、と言うと牧原が珍しく声をあげて笑った。いつもの貼りつけた笑顔より、そっちのほうがいいぞ。言わないが。

 この日から、何故か牧原はいつも隣にいるようになった。そして時々肩を震わせて笑っている。意味がわからん。


Case2:書記と一緒!

「……」
「……」

 いつも通り生徒会室に来ると、長谷川が黙々と仕事をしていた。無口な後輩は微妙に扱いにくく、あまり二人だけにはなりたくない。だが扉を開けてしまったからには入らなければ。
 意を決して生徒会室に入ると、長谷川はノロノロと顔をあげて小さく会釈した。手を上げてそれに応えると、会長席に座る。
 最近なぜか仕事が増えた。壁に穴があいただの、消火器が壊れて廊下が一面真っ白になっただの。何かしらが一日に片手以上は壊されている。お陰で生徒会室にこもりっきりだし、牧原は風紀室と生徒会室を行ったり来たりだ。
 風紀は何をしてるんだあの馬鹿は。
 ココにはいない風紀委員長に悪態をつきながら、書類を確認しサインをしていく。

「チッ、今度は窓ガラスと机か。どうなってんだ。俺を仕事で殺す気かちくしょう」

 イライラとしながら紙面にペンを走らせていると、甘い香が鼻をくすぐった。何だ?と顔をあげると、長谷川が目の前に立っていた。

「……?」
「……こ、れ」

 見上げていると、かちゃ、と小さく音をたてて置かれたのはカップ。甘い香は紅茶の匂いだったらしい。

「きゅーけ…ひつよ……ふくかいちょ、言ってた」

 「休憩必要、副会長が言ってた」でいいのか?まぁ、多分あってるだろ。紅茶に手を伸ばして飲む。甘い味が喉を落ちていく。

「そか。あー、……ありがとな」
「……ん!」

 様子を伺っている長谷川に笑みを向けるとぴょん、と犬耳が見えた気がした。なんだ幻覚かと思ったが、大きく揺れる尻尾まで見えてきたので自分がどれだけ疲れていたかがわかった。半分終わったら一度休もうと思いながら、嬉しそうに尻尾を揺らす長谷川に向かって手を差し出す。

「長谷川、お手」

 差し出した手にぱちん、と俺より大きな手が置かれた。
 わかった。幻覚じゃなくて、長谷川が犬なだけだった。

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