副会長の思惑

『一ヶ月後に転校生が来る。まず最初にして欲しいのは……』

 俺があの子に伝えたのは、いくつかの注意点と情報。どう活用するかは任せたけれど、きっとやりきる。
 この信頼はほんの数週間で生まれたものだけど、まったく心配はしていない。
 それにしても。暇を持て余していた彼が、この作戦を断る事はないと踏んでいたけどまさかココまで順調に行くとは思ってもいなかった。

「頼、どうしたんだ?」
「うん?いや、なんでもないよ。それより瑞樹くん、この後暇かな?よければ」
「瑞樹ー!頼じゃなくて」
「僕達とお話しよー?」

 いい感じに入ってくれてありがとう双子。
 坂本はそのまま双子に強制的に連れて行かれて生徒会室を出て行った。

 うん、やっぱり王道はこんな感じだよな。頑張ったかいがあったよ。
 会長達の興味が王道くんに行くように色々裏で手を回して、少し疲れたけどこんな王道展開に手を抜くわけにはいかない。
 なんたって、王道くんもとい坂本瑞樹は元族の総長だし。会長や双子に書記は敵対関係の族だ。王道くんが抜けた理由は知らないけど、会長達は捜し回って……なかった。ココだけが王道と違う。ああもうバカ!
 じゃなくて、だから興味を持っていくのは本当に簡単だった。
 だけど風紀が!風紀委員長も副委員長も、両方とも王道くんに興味がないというかむしろうざったそうにしてるというか。近寄るんじゃねーよ的な雰囲気というか。ああ、会長と風紀委員長の取り合い、見たかったのに!

「と、そろそろいいかな」

 時計の針の位置を確認して、妄想という名のトリップから現実へ戻る。生徒会室に俺以外の人がいないかを見て、応接室より高そうなソファーに座った。ポケットから携帯を取り出し最近見慣れた番号にかける。

『……また?』
「またです」

 しばらくのコール音の後、電話に出たのは計画に巻き込んだ彼。
 呆れたような声に、くすりと笑う。王道くんとのイベントの後、習慣となってきた電話は呆れの表情を向けられるけどそれでも今のところは切られた事はない。律儀なのか何なのかは知らないけれど。

「さっきね、双子が王道くんを連れて行ったんだけどね。この後きっとバラ色な世界が広がるんだよっ」
『……アンタ、本当に好きだよな』

 とりあえず今のところ、この関係は良好だ。


END

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