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「リズ、もっと撫でて」
「うん」
髪に指が差し込まれてそのまま優しく撫でられた。
穏やかな手の動きに目を細めると、リズは少し迷ったように頭を撫でていた手で背を軽く押してくる。逆らわずに腕から力を抜くと、リズの膝に頭が落ちた。
「ジンくん、不安じゃない?」
「明日には戻るって聞いたから、あまり不安じゃない。何よりリズもいるし」
「……そう」
膝に懐いていると、嬉しそうに笑ったリズが柔らかい猫の耳の根元をくすぐるように指を動かす。
「これ、可愛いね」
「……猫の耳はリズ似合うと思う」
「ジンくんのほうが可愛いよ。僕なら……そうだね、狼なんてどうかな?」
「……狼?」
ふふ、と何かを感じさせる笑い方にぞくりと背が震えた。耳を弄っていた指先が身体を辿るように動いて、機嫌良くシーツを叩いていた尻尾に触れる。
「リズ?」
「うん、ジンくんを可愛がろうかな、と」
先ほどの笑みと、今の言葉に何となくこれから何をされるのか気が付いて。ああ、だからクラルさんがにやついていたのか、とリズから気を逸らした一瞬の後。
「…………あれ?」
あ、さっきもこの言葉を言ったな、なんて思って。でも朝と違うのはにっこりと笑うリズが真上にいて、両手がシーツに縫いとめられていること。
「……リズ、器用だね」
「それほどでもないよ」
間の抜けた、多分状況に似合わない声で呟くと額にキスが落とされた。
「害がないなら、この機会を逃さないようにしないと」
いつもの笑みの中に、欲が含まれていて思わず目を瞑ると目蓋にキス。頬、鼻の頭まで落とされるキスにくすぐったくなって、身をよじると宥めるように唇にされた。
目を開けると思ったよりリズの顔が近くにあって、目を瞬かせると少し潤んだ綺麗な目と視線が交わう。
「……ジンくん、覚悟してね」
もうしてる、なんて言葉はまた合わさった熱い唇に遮られた。
end