▼ I play in an amusement park
「雪菜にーちゃ!アレ!アレがいいっ!」
「ゆーや、ジェットコースターは背が足りないから乗れないよー?」
「佳也、アレ……」
「……メリーゴーランドなんか乗れるかっ!」
「……」
「……灯鷺さん。なんか、色々とすみません」
ゆっきーの手を引いて楽しそうな優也と、なんだかいい笑顔なゆっきー。佳也の袖を掴んで催促するみぃちゃんに、本気でメリーゴーランドに乗りたくないと訴える佳也。
目の前の光景にため息をついた灯鷺さんに申し訳なくて、どうしたらいいかわからない。
いつもの帰り道。灯鷺さんに送ってもらいながら、次のお休みをどうするか二人で話てる時、いつからそこにいたのか優也の手を握ったゆっきーが会話に入ってきた。
『次の土曜日は、遊園地いこ。みんなでー☆』
にっこり笑顔なゆっきーの隣で、期待にきらきらと目を輝かせた優也がじ、と見上げている。
きっと遊園地に行きたいと言い出したのは優也。それを叶えようとゆっきーは誘っているみたい。多分、俺や佳也がいないと嫌だと言ったんだろうな。
どこまでも優也中心のゆっきーに苦笑が浮かぶけど、あまり遊びにつれていけない優也の願いだ。叶えてあげたいと思う。
ちらりと隣に並ぶ灯鷺さんを見上げると、ため息をついていた。灯鷺さんは優しいから、ゆっきーの計画に賛成してくれるはず。
数分後、やっぱり灯鷺さんは折れてくれた。その後ゆっきーは佳也とみぃちゃんも説得したらしい。
こうして俺達は遊園地に行くことになった。
「わぁ、お昼?もうそんな時間ー?」
「あはは……」
「……お前らが遊び倒したからな」
「昼飯にするか?」
「するーっ!お腹ペコペコー」
「けーやの、手作り……」
そんなわけでお昼。芝生にレジャーシートをひいて、みんなでお弁当を囲む。ちらちらと女の人や男の人からの視線がするけど、そんなことより今は目の前のお弁当だ。
佳也のご飯は凄くおいしい。兄弟のひいき目なんかじゃなく、本当に。
みんなで食べる用にと、大きい弁当箱を二つ使っての料理。
「あ、たこさん!」
「そうだねー、たこさん可愛いね」
「優也、いただきますしてからだよ?」
「はーい」
今にも食い付きそうな雰囲気の優也を嗜めてから、お皿をくばったりお茶を出したり。
ちなみに、お茶やお弁当は交替で灯鷺さんやゆっきー、みぃちゃんが持ってくれてた。嬉しいけど、軽々持てる三人が羨ましいと思ったのは内緒だ。
「いただきます!」
「まーす。ゆーや、はいたこさんに卵焼きだよー」
「ゆきなにいちゃんにも、あげるー」
「まーす、って……はぁ、いただきます」
「…いただき、ます…。佳也、うさぎ…」
「あ?林檎か?ほら…」
「いただきます。あ、灯鷺さんは何食べます?」
「……いただきます。俊也の好きなもの食いたい」
「え、あ、」
「ソコ、砂吐きばかっぷるー☆」
六人でわいわいしながらお弁当を食べる。次にどこに行くかとか、父さんへのお土産は何にするとか話しながら。
久しぶりの遊園地。それも灯鷺さんと一緒に、なんて。嬉しくて仕方ないけど、今度は、二人で来たいな、なんて。欲張りかな。
「俊也、」
「はい?」
考えながら食べてると、隣に座っていた灯鷺さんがこそりと話し掛けてきた。
目の前ではゆっきーとみぃちゃんがお土産を取り合ってて、佳也は呆れながら、優也は楽しそうにそれを見てる。だから、俺たちが内緒話をしても聞こえないだろう。箸は持ったまま、同じようにこそりと話し掛けた。
「……なんですか?」
「ああ、もう少しで夏休みだろ?」
「?……はい」
何だろう?
言いにくそうにする灯鷺さんに首を傾げる。
「それでだな……夏休み、今度は…二人で」
「……はい」
続いた言葉に、嬉しくて嬉しくて、笑って頷いた。
みんなで食べるお弁当も、遊ぶのも良い。でも、今度は……。
『今度は二人で、出掛けよう』
(総長にやけてるー。あはは、砂吐きだよー☆)(にやにやー?)(……俺達、わすれ…られて、る……?)(知らない聞こえない。優也も見るな)
end