He boasts of his conquests

 まさかこの人と二人になるとは思わなかった。

「……とっとと選べ」

 まさかの展開にぼけっとしていると、目の前に自販機。んでもって赤い人がボタンに指をかけていた。ちなみにソレはコーヒーで。いやいやムリですコーヒー飲めませんよって。

「こ、紅茶で!」
「あ?あぁ、コレか」

 赤い人がボタンを押すと、がこん、と音がして缶が一本ころりと取り出し口に。取り出してくれたソレを貰って、さてどうしてこうなったのかと首をひねる。
 たしか、学校帰り。校門で女子が騒いでるな、って思ったんだ。でも俺には関係ないと帰ろうとした。けど、徐々に校門に近づくにつれて見えてきたのは赤い髪をした、よく見知った人で。思わず固まってしまった。
 そして気付けばこの状況。きっと頭が色々とついていかなかったんだな。
 でも、一つだけ覚えてる。固まった俺に、この人がかけてきた第一声。


『俊也が欲しいもの、知ってるか?』
「俊也が欲しいもの、知ってるか?」


 耳に聞こえてきた言葉と、思い出していた言葉が合わさった。
 気付けばいつの間にかベンチに座らされた俺。その隣に腰をおろしていた赤い人。が、妙に威圧感のある目で見下ろしていた。

「あー、……俊にぃが欲しいもの、でしたよね。えーと……プレゼント的な意味でいいですか?」
「ああ」

 欲しがってるものなんかあったっけか。
 というかなぜプレゼント?誕生日、じゃないよな。なんだろ?
 軽々聞けるわけがないので、悩むふりをしながらちらりと赤い人を見た。視線に気付いてないのか、コーヒーを飲みながらぼんやりと空を見上げてる。
 多分、俺が思い出すのを待っているんだろう。

「……なんだ。何かあったか?」

じっと見すぎていたらしく、視線に気付いた赤頭がこっちを見た。

「あー……まぁ、」
「何だ」
「たしかこの間……」

 俊にぃがテレビを見ながら、「コレ、いいな」と言っていた棚の事を教えると「ふぅん、」と呟いて赤い人が立ち上がった。
 コレでいいのかな。多分、俊にぃ自身「いいな」って言ってた事忘れてそうだけど。他に思いつかないから仕方ない。

「えーと、俊にぃの誕生日はまだ先ですよ?」
「知ってる」
「……」

さいですか。

「チビ、帰るぞ」
「はい」

 息をついて立ち上がる。どうにもこの人といるのは苦手だ。
 そういえば、今日雅はどうしたんだろうか。ちゃんと家に帰ったんだろうか。つらつらと思い出しながら、飲まなかった紅茶をカバンにいれる。

「……チビ」
「はい?」
「お前の飼い犬」
「へ?「けーや!」どわぁっ!」

 だん、と大きい音がしたかと思うと背中から最近慣れてきた物凄い衝撃。
 誰が犯人かはわかってる。衝撃より前にした声は、昨日聞いたばかりの低いそれだったから。

「……雅」
「総長、すぐに終わるって言った」
「すぐに終わっただろ」
「5秒で!」

 ムリを言うな雅。真剣な表情だからこそ、呆れてしまう。

「……おい、チビ。バカ犬のしつけは任した」
「ちょ!まった、一つだけ!」
「……あ?」

 前から一個だけ聞きたかった事がある。俊にぃがいる時には聞けない事。


「……俊にぃの事、そんなにスキなんですか?」
「当たり前だろ」


 速答ですか。そうですか。ごちそーさまです。


(……俺のほうがもっとスキ)(は?)(けーやのこと、…スキ)(……っ、!)

end

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