▼ change
俊也と付き合うようになってから半月。たった数週間と言えど、なかなかに密度のある半月だった。
最初はびくびくと伺うように距離をあけていたが、日が経つにつれて自然な表情を見せてくれるようになった。
今でも時折逃げ出しそうな雰囲気を醸し出す時があるが、それは……まぁ、いわゆるそういう感じになった時だ。
「総長、何にやにやしてんのー?きもーい!」
「……ん」
「うるせぇ」
屋上でいつものように寝転がっていれば、にやけ面をあらわに雪と雅がきた。ちなみに俊也は授業中。チビたちもそれぞれ学校だから、コイツらも暇なんだろう。
「んでー、……総長?聞いてる?つーか、聞け」
「人の惚気は聞かない主義だ」
「ちょー、優也の可愛さ半端ないんだよ?説明のしようがないく「ショタコン黙れ」ショタコンじゃないしー!」
ああうるせぇ。
雅は我関せずで携帯弄ってやがるし。あの緩んだ表情からして相手はチビ一号か。
「ン、……総長、佳也、今日早めに終わる……」
「……好きなようにしろ」
段々とコイツらは変わっていく。少しずつ少しずつ。俺も、変わっていく。アイツに会ってから。
コレがいい事なのかはわからねぇ。けど、この変化は心地好い。
「ふふー。なぁんか、俺ら青春してる?恋しちゃってる?みたいな☆」
「間違いではねぇけど……オマエが言うと」
「気持ち悪い」
「ちょ、二人してなんなわけっ?!」
笑いあう、なんて事はいつもの事だったが、以前より穏やかな雰囲気。交わされる言葉も前とは違い、話題は俊也たちの事ばかり。
前までは自分たちの事や、喧嘩の話、その場その場で思いついた事を話していた。独り言に近い会話もあった気がする。今じゃどんな内容の話をしていたか、あまり思い出せない。
ああ、会いたい。顔が見たい声を聞かせろ。
キスがしたい。抱き締めたいつーか抱かせろ。
沸き上がる感情に、熱く熱く何かがくわわる。愛しいと思う感情と、欲望に負けそうな理性。せめぎあう二つに、どちらを勝たせればいいのかわからない。
「雪、雅」
「んー?何?」
「……?」
体を起こして二人を呼ぶのと、終業のチャイムが鳴ったのはほぼ同時。
「いくぞ」
頭ん中の決着はつかなかったが、どちらにしろ俊也には会いにいく。
抱き締めるのもキスをするのも、ナニをするのかはそん時に俊也に決めさせる。
「俊也……」
――今じゃオマエが隣にいない、なんて事は考えつかない。
end