suddenly

 家に帰ったら部屋ん中が色々な意味でカオスだった。

 今日のオレは朝の運勢は一番で、朝から昼にかけても何事もなく平和。けど、夕飯の買い物から帰ってきてみたら。
 俊にぃ、何で赤い人の膝の上?優也、え、何で黄色い人と抱き合ってんの?あれ、どっちかっていうと羽交い締め?
 ちょっと待て。ココ、オレの家だよな?間違ってないよな?ってかあの赤い人、俊にぃ毎朝迎えに来てる人じゃん。

「……えー?」
「け、佳也!」
「……ただい、ま?」

 目の前の光景に、どうしたらいいかわからずスーパーの袋を持ったまま、リビングの入り口で立ち往生してると、やっと気付いた俊にぃが驚いたようにオレの名前を叫んだ。
 とりあえずコレでこの家がオレん家だって事は証明された。

「あー、俊也くんの弟くん?子ウサギちゃんが増えたー」
「……う、うさぎ?」
「……ゆっきー、俺の弟はみんな子ウサギなの?」
「かぁわいいよね、うさぎちゃん。ゆーやが一番だけど☆」

 ――とりあえず、夕飯の支度するか。
 色々突っ込みたい事があるけど、この際無視だ無視。
 リビングから離れてキッチンに行くと、幾分か気分が落ち着いた。見慣れた配置に、思わずため息が出る。

「……夕飯迄には、帰るんかな」

 袋から大根や人参を取出しながら、ふと気付いた。育ち盛りが五人もいる。
 買ってきたもので足りるか微妙なところだ。
 確認するべきかしないべきか。でも、リビングに戻るのは嫌だ。面倒な事には巻き込まれたくはない。
 男同士の膝だっことか、そんなん見たくなかった。しかも、されてんの俊にぃだし。
 ギリギリ優也はまだ子供だから、甘えてる……甘えられてる?ように見える。

「どう反応を返そう……」

 きっと次に顔を合わせたら、にぃがどもるな。
 顔、真っ青にしてそー。っていうか、アレはただのスキンシップなのか?それとも……つ、付き合ってんのか?それによって心構えが必要なんだけど。

 実の兄だし、できるなら傷付けたくはない。

「……夕飯?」
「ふっ?!」

 キッチンの前で、悶々と考えていると背後から腕が生えて腰に回った。同時に耳元で低く澄んだ声。
 え?体動かないし!金縛りか?いや、こんな真っ昼間から……ってじゃなくて!

「な、えっ?なに……っ!?」

 声のしたほうを見上げてみれば、さっきリビングで見た顔。青い髪のほう。
 視線の先はオレの手。マジマジと弁当用に買ってきたミニトマト見つめてる。

「……作るのか?」
「まぁ……」

「「……」」

 何しに来たんだこの人。
 飯をたかりにでも来たのか?まだ何も手ぇつけてないけど。

「……腹、減った?」
「……」

 問い掛けると小さくこくん、と一回頷いた。子供ですか。

「じゃあ、一回離して。簡単なもの一個作ってやるから」
「……ダメ?」
「ダメ」

 強めに言うと渋々といったように離れていった。それでもまだ視線は感じるから、結構近くにいるんだろう。

「名前、……けいや?」
「そう。佳也。にんべんに土を二つな」
「……雅」

 雅。青い頭で雅か。
 まぁ、整った顔に似合わなくもない。

「名字は?」
「……ない」
「いやいやいや、あるだろ。いきなり名前呼びはムリです。つーわけで、「雅」……わかったよ」

 オレが折れるしかないのか。オレが間違ってるのか?だって、俊にぃといる時点で年上だろ。敬語使ってないけどいまさらか。

「……んじゃ、やるかなー……」

 リビングの事はとりあえず忘れた事にして、この腹減りをどうにかしよう。
 話はそれからたっぷりと聞いてやろう。うん、話すの苦手そうだけど……、なんとかなるだろ。


end

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