necessarily

 ぷるぷるぷる。
 そんな擬音語が聞こえてきそうな程震える子ウサギちゃん。ウサギちゃんに引っ付いて離れない。

 うーん、ホント子供うけしない顔だよね、総長。
しかも宥める俊也くんの言葉に軽くアッパーくらってるしー。はは、マジ笑えるし。

「ほら優也、泣きやめ。な、ゆーや?」
「うっ、ふぇ……ぅえ〜」

 なかなか泣き止まない子ウサギちゃんに、俊也くんは必死。ちなみに今俺らはリビングにいます。
 四人掛けのソファーに俊也くんと弟くん。ついでに俊也くんの隣に総長。さすがに膝に乗せることはできなかったみたいだ。俺と雅は向かいの二人掛けに並んでる。
 移動したのはいいけど、なかなかに泣き止まない。
 ああ、でも泣き顔可愛いなー。

「うぐ、ひぅ……っ」
「優也ー」

 顔真っ赤にして涙でぐしゃぐしゃ。目は腫れてて、普段なら見るに耐えないんだろーけど。

「しようがないなー。おにーさんが人肌脱いであげよーね☆」
「え、ゆっきーっ!?」
「俊也くん、この子かしてね」
「ぅ、えっ?!」

 テーブルを回って子ウサギちゃんの隣へ座る。そのままお膝へお招き。
 びっくり固まってるトコ悪いけど、向き合うように膝に座らしたからぽかんとした顔が目の前に。
 ポケットを探れば、飴玉が一つ。包みを破いて間抜けに開く口へと突っ込む。

「むぐっ」
「おいしー?オレンジ味」

 状況がわかってないのか見上げたままの子ウサギちゃんのほっぺたをむに、と摘む。すると無意識か何なのか、ぼんやりとしながら口がモゴモゴと動いた。
 うん、いい感じじゃない?こういう子はまず餌付けが必須でしょ。

「ゆ、ゆっきー」
「なぁに、ウサギちゃん」
「え、と」
「オマエって子供好きだったか?」

 飴玉で膨らむほっぺたを突っついていると、横から俊也くんと総長。あれ、いつの間に膝抱っこされてたの、ウサギちゃん。
 気付いたら並んで座っていたはずが、ウサギちゃんは総長の膝の上。

「えー?子供は好きじゃないよ。でも、俊也くんの弟くんでしょ?」

 乱暴にするわけ、いかないっしょ。それに、それとはまた別にこのチビっ子には興味があるんだよね。

「ふふん☆」
「……雪菜、気持ち悪い」
「雅、また冷蔵庫空にするよ」
「ソレはダメ。腹が減って倒れる」

 嫌々と首を横に振る雅。
 ふふ、この間食べ尽くしてやったからね。

「さて、と」

 弟くんへ視線を戻す。
 口は動いてるけど、視線が俺の顔を見たまま。あは、かーわい。

「子ウサギちゃん、お名前は言えるかなー?俺はねー、雪菜ってゆーの」

 頭をわしゃわしゃと撫でれば、はっとしたようにパチパチと瞬きをする。
 やっと視線が合った。

「ゆき……?」
「そ、雪菜。子ウサギちゃんは?」
「う、うさぎじゃないもん!ゆーやだよっ!」

 ゆーや。漢字がわかんない。後で俊也くんに聞こ。

「ゆーやくんは何年生?」
「3年生だよっ!」

 小学校3年生か。俺が3年時はこんなだったかな?
 もう少し滑舌も良かったし、こんな無防備じゃなかった気がする。うーん、それになんかぷにぷにしてるし。
 脇腹から背中にかけてをペタペタと触ると、手に馴染む弾力がかえってきた。

「む、う……ゆきなにいちゃ、くすぐった!」

 あっはは☆なんか変態さんになった気分。
 膝の上で身をよじって揺れるゆーやくんが、ベッド上の光景に見える。

「雪菜、ショ「雅、うるさい」

 やばいな、この子欲しい。焦がれてる感じが、体の中でくすぶってる。

「ね、ゆーやくん」
「……なーに?」

 恐怖心が薄れてきたのか、ちゃんと目を見て話してくれる。上目遣いが凶器。
 しかもちゃんとゆーやくんの体を見下ろすと、短パン。太ももを半分も隠してない。思わず鼻の下に手をやって確認してしまった。
 総長の気持ちが良くわかった瞬間だった。

「……大事にするから、俺のモノにならない?」
「「は?」」

 はは、仲良しだな総長と俊也くん。

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