▼ be found out
「……俊也ー?しゅ、ん、や!もしもーし?」
「………」
「尚久、コイツダメだよ。違う世界にいってんじゃね?」
「いや、でもさ……おーい、俊也ー?」
ぼんやりと窓の外を見たまま、何の反応も起こさない俊也。朝からずっとだ。登校してきてからお昼まで、ずっとこの調子。
何があったのかさっぱりわからない。昨日だって、別棟に行くって言ってから帰ってこなかったし。
「昨日、何かあったのかな?」
「さぁなー。おおかた広い食いでもしたんじゃないのか?」
「え、神田と違って俊也はそんなことしないよ」
「!オレはそんな事しねーし!!」
うるさいなぁ。でも、本当にどうしたんだろう?
「俊也〜」
僕と神田の掛け合いが聞こえてないのか、俊也は外を見たまま。気になってしかたない。
なんだろ。何があったんだろ。何かあったなら相談にのるし、教えて欲しい。友達なんだし、少し寂しいな。
――ザワリ、
そんなふうに肩を落としていると急に、空気が変わった。廊下が騒がしくなる。
なんだろ?ざわめきがだんだんと酷くなる。気になるけど、今はそんなことより俊也だし。
「お、おい、尚久……」
「今忙しいからあっちにいって」
「ひでぇ!……って、じゃなくて!」
もう、なんなわけ?
俊也に向き直って声をかけ続けてると、神田が腕を引っ張ってきた。
「……ぁ、」
振り返ると、教室のドアのところに普段なら絶対見ない姿があった。一言で言うなら赤。鮮明な色は艶やかさと一緒に、恐怖を感じさせる。
この辺りを仕切るチームのトップ、篁灯鷺、だ。
「なぁ、アイツ、こっち見てないか……?」
また腕を引っ張られる。確かに、篁灯鷺はこっちを見ていた。熱?なんだろ。凄く感情のこもった視線が向けられている。けど、視線は僕や神田を見てない。もっと先の少し下。
……もしかして、あの人が見てるのは?
「俊也」
初めて聞いた低い声に、びくり、と傍らで反応した気配。
……ああ、わかった。なんで俊也の元気がなかったのか。
どうやら、厄介な人に好かれたみたいだ。
end