be found out

「……俊也ー?しゅ、ん、や!もしもーし?」
「………」
「尚久、コイツダメだよ。違う世界にいってんじゃね?」
「いや、でもさ……おーい、俊也ー?」

 ぼんやりと窓の外を見たまま、何の反応も起こさない俊也。朝からずっとだ。登校してきてからお昼まで、ずっとこの調子。
 何があったのかさっぱりわからない。昨日だって、別棟に行くって言ってから帰ってこなかったし。

「昨日、何かあったのかな?」
「さぁなー。おおかた広い食いでもしたんじゃないのか?」
「え、神田と違って俊也はそんなことしないよ」
「!オレはそんな事しねーし!!」

 うるさいなぁ。でも、本当にどうしたんだろう?

「俊也〜」

 僕と神田の掛け合いが聞こえてないのか、俊也は外を見たまま。気になってしかたない。
 なんだろ。何があったんだろ。何かあったなら相談にのるし、教えて欲しい。友達なんだし、少し寂しいな。

 ――ザワリ、

 そんなふうに肩を落としていると急に、空気が変わった。廊下が騒がしくなる。
 なんだろ?ざわめきがだんだんと酷くなる。気になるけど、今はそんなことより俊也だし。

「お、おい、尚久……」
「今忙しいからあっちにいって」
「ひでぇ!……って、じゃなくて!」

 もう、なんなわけ?
 俊也に向き直って声をかけ続けてると、神田が腕を引っ張ってきた。

「……ぁ、」

 振り返ると、教室のドアのところに普段なら絶対見ない姿があった。一言で言うなら赤。鮮明な色は艶やかさと一緒に、恐怖を感じさせる。
 この辺りを仕切るチームのトップ、篁灯鷺、だ。

「なぁ、アイツ、こっち見てないか……?」

 また腕を引っ張られる。確かに、篁灯鷺はこっちを見ていた。熱?なんだろ。凄く感情のこもった視線が向けられている。けど、視線は僕や神田を見てない。もっと先の少し下。
 ……もしかして、あの人が見てるのは?

「俊也」

 初めて聞いた低い声に、びくり、と傍らで反応した気配。
 ……ああ、わかった。なんで俊也の元気がなかったのか。

 どうやら、厄介な人に好かれたみたいだ。


end

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