be caught

 学校の裏庭。開校当初に作られた大理石の噴水に、それを囲むように設置された花壇。そして更にそれらを囲むように植えられた深緑樹。普通なら弁当を食べに来たりサボりの恰好の場所になっただろうそこには、誰も、近づかない。確かに一昨年まではそんな生徒達の憩いの場であったようだが(先輩談)、去年あたりからその場所は魔の域として恐れられはじめたから。
 原因は、ある生徒がこの学校に入学してきたから。その生徒が裏庭を占領してしまったから、だ。

「………」

 そしてそいつは今現在、俺の後ろでプカプカとタバコなんざ吸ってやがります。彫りが深くて綺麗な顔立ちに、緋色の髪にこれまた赤系統のカラコンを切れ長の目につけている姿は、俺にとってはまさに鬼。恐怖の対象だ。
 いつものチキンハートな俺だったら、とっくのとうに逃げているか隠れている。ああ、なのになんだって俺はこんな場所にいるんだ。なんで俺はコイツの膝の上に座ってるんだ。なんで腕が腰に巻き付いてるんだ。俺はただたんに別棟に行こうとしてただけなんだぞ?それがなんで膝の上なんだ!?

「……オイ」

 なんなんだよコイツ。俺なんか膝に乗っけて何になるんだ堅いぞ俺の尻は何がしたいんだああもう俺にはさっぱりだよさっぱり妖精だよ!古いけどな!
 しかも背中と胸がぴったんこだがら、甘い香水?の香りまで漂ってくるし!女の人だったらいちころ☆みたいな!!

「……オイ、聞いてんのか?」
「ふぎゃんっ!?」

 み、みみみみみっ?!耳に、息、が!つか低い!ひっくい低音ボイスが聞こえて、ついでに吐息が耳にかかってちょいパニック寸前な俺。
 ちょ、やめて!んな声出すなよ!他の人にやって!俺にしても何もでないし出さないぞっ?!

「たた、た、篁、さん」
「灯鷺」
「ひ?」

 ひさぎ?ひさぎ……ヒサギ、灯鷺……え、篁さんの名前じゃん。ええ、呼べと?
 どうにか降りたくて振り返ってみると、眉間にふっかい皺をつけていらっしゃられました。怖いっす。マジで。つかもとがもう僕不良でっすみたいな顔してるから余計怖いんじゃぼけぇええっ!!

「いや、えと篁さん」
「………」
「………」
「…………」
「……えと、」

 もしかして呼ばないと返事してやんねぇよ、みたいなそんな感じっすか?

「……ひ、……ぎさん」
「聞こえねェ」
「!……ひさ、ぎさん……?」
「もう一回」
「!?」

 今のでよくないですか?!俺精一杯!ギリギリ!!恥ずかしすぎてマジ死ぬから!噴死するからー!や、もーホント誰か助けてこの人わけわからんです!

「ほら、後少しじゃねェか」
「う、ぁ……」

 この人楽しんでる……!目元が笑ってるし!なんだよ何の嫌がらせなわけ?何、んなに平凡さんが珍しいっすか?嫌味かこのやろー。

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