▼ 2
「ええと……」
「もう……。どうせ、会長の親衛隊だからついていけば僕がいると思ったんでしょ?」
「!なんでわかったの?」
口ごもっていると、椿が苦笑を浮かべて言い当ててしまった。なんでわかったんだろ?口に出てたのかな?それとも顔に?
わたわたしていると、ぎゅう!と今度は前から抱きしめられた。
「危機管理っていうのを覚えないとダメだね」
「ききかんり?」
「そ。僕以外について行かないようにとか、食べ物を貰わないようにとか?」
「俺、そこまで子供じゃない」
そう?なんて楽しそうに笑う彼の背中に手を回しながら、先程のことを考える。
えっと、親衛隊の子たちには、俺に手を出すなと伝えてくれてたんだよな。ということは、捨てられるって事はやっぱり勘違いだったんだ。
安堵して椿の肩に額をぐりぐりするとくすぐったい、って怒られた。
「じゃ、とりあえず寮に戻るよ。ココにいたらいつあの転校生とバ会長たちが来るかわからないしね」
「う、うん」
椿は会長の親衛隊だけど、別に会長が好きで入隊したわけではない。ただ、自分の身の安全と地位の確立が目的だったようで、その為に色々と隊に貢献しつつルールや色々な事をしたらしい。確かに会長の隊は学園内では一番の大きさだし、その隊長ともなればある程度の拍がつく。一般生徒では近づこうとは思わないだろう。
そんな椿と一般生徒以下の俺がなぜ抱きしめあったりしているのか……。簡単だ。幼馴染だからだ。言っておくけど、まだ恋人ではない。
小さい頃から一緒にいたから、恋仲ではないけれど抱きついたりとかキスとか、夜の……とかは普通にする。通常の幼馴染ではしない事は分かってるけど、幼いころから椿にそうやって接されてきたから。
最後までしてしまった時も、嫌悪感はなく反対に幸せを感じてしまった程だった。
「つばきー」
「うん?」
「あのね、」
「うん」
「へへ、大好き」
「うん、知ってるよ」
コレが俺たちの普通だから、それで良いと思う。
決定的な言葉とかはないけれど、一緒にいることが幸せだからコレで良い。
「ね、椿。部屋に戻ったらどうする?」
「……んー、いちゃいちゃ?」
あ、でも少しは言葉にしたいな、って思う時もあるけどね。だって、俺は椿が大好きだし恋人っていう関係になれたらきっと幸せになれる気がする。
でも、もう少し先で良いかなって。
end