声に出したい不透明な関係

「転校生と纏めて生徒会から離れて!」
「平凡、聞いてるの!?」

 そう言われても。俺は引っ張り回されてるだけなんだけどな。ソレに、この事に関してはあの人も「仕様がないね。転校生はすぐに弄り殺したいけど、優太がそういうならもう少しだけ遊ばせてあげる」って言ってくれたのに。あの言葉は嘘だったのか。
 呼び出しより、そっちの方がショックだ。やっぱり捨てられるのかな。俺が可愛くも恰好よくもないから?遠まわしに捨てられた?いや、でも昨日も「大好きだよ」って言ってくれてたのに……。もしかして他に好きな人が出来たとか。
 ネガティブな方向に考えが向くのはいつものことだけれど、今回ばかりは疑う要素があり過ぎて泣きたくなる。もうぎゅうとかして貰えなくなるのかな。ちゅうとか、手を繋いだりとか……。

「……うぅ」
「ちょ、いきなり泣かないでよ!さっきまで平然としてたのになんなわけ!?」
「き、嫌われたぁ……」
「「は?」」
「もう顔出すなとか、学校辞めろとかそういうことだよね?俺が馬鹿でKYで何もできない平凡だし、夜だって恥ずかしがるだけで喜ばせてあげたり気持ちよくさせてあげられなかったから飽きられたんだ。っていうことは俺この学校から早く出なくちゃいけないよね。これ以上嫌われたりしたら俺立ち直れないっていうか死んだほうがマシ?あ、でもココだと迷惑かけるよねどこがいいのかな苦しいのは嫌だ「優太、ストップ」

 自己嫌悪とかでぐるぐる回ってれば、背中からぎゅう、と強く抱きしめられた。鼻を擽るのは甘い甘い香水の香り。俺がプレゼントした彼と同じ名前の椿の。

「何、やってるの」
「……つばき」
「「隊長!?」」

 肩越しに振り返ると、困ったような怒ったような表情をした椿がいた。
 ぽかんと見つめていると、幾分か俺より身長の低い彼はがぶっと首に噛み付いてきた。

「っ!?」
「優太、ちょっと待ってね。……ソコの二人」

 にこりと優しく笑った椿は、俺の手を握るとさっきまで怒っていた親衛隊二人に向かって、ゆっくりと口を開いた。

「僕の優太に、何してたの?ちゃんと言ったよね、この子には手を出すなって。聞いてなかったの?」
「……隊長の?」
「て、てっきり隊長は会長様達に言われて止めていらっしゃったのかと……」
「違うけど」

 少し機嫌が悪いのかな。イライラとした口調だ。
 俺のせいで責められている親衛隊の子たちに申し訳なくて、だけど、どうにも声をかけるのは躊躇われるから、繋いでいた手を軽く引いてみる。

「ん?なぁに?」

 椿は柔らかい笑みでこっちを見てくれた。
 それにほっとしながら、自分が悪いのだから二人を怒らないでと言う。すると少し驚いた後、昨日と同じ表情で「仕方ないね」と親衛隊の子たちを離してくれる。

「まったく、次は無いからね?他の子たちにも伝えておいて」
「「は、はいっ!」」

 二人は怖々としたように隣を通り過ぎ、「すみませんでした!」と言って足早に駆けていった。

「……椿」
「優太、どうしてのこのこついて来ちゃったの?」
「あう……」

 二人を見送った後、ちょっと怒ってる椿が可愛らしくほほを膨らませて睨んできた。
 会長の親衛隊だって言ってたから、椿からの呼び出しだと思ったんだ。そう言ったら呆れられるかな?

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