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「意味が理解できないか?……そんなはずはないな。お前はわかっていてはぐらかしている」
「別にはぐらかしてなんかねぇよ……」

 ふわりと浮かぶ光により幻想的なその中で、真剣な表情に自然と声音が弱くなり、言葉尻が僅かに聞こえる程度になってしまった。
 色々な感情が浮かぶ目が見れずに少し俯けば、頬に手が添えられて優しい動作とは反対に強制的に顔が上げられる。

「俺を見ろ」
「……見てるだろーが」

 正しくは見せられてる。だが、そんな空気が読めないことはしない。というかそんな余裕が無かった。
 今まで隣にいたり前にいたりはしたが、こんなにも近くにいたことは無い。そのせいかどうかは知らないが、どうにも落ち着かないし、合わさった視線に何故か徐々に体温が上がってくる。

「長谷部、俺はお前が好きだ。お前も俺が好きだろう?」
「ッ、あー……それは、どういう意味で」
「この体勢でわかるだろ」

 突然の告白に、抜けた声で返せば小馬鹿にしたように鼻で笑われた。言い返そうとして、でもすぐに欲が含まれる視線にびくりと身体が震えて無意識に荒川の制服を握る。まるで縋るような仕草に気付かずに、先程否定したばかりの『好き』という言葉が頭の中を巡った。

「で、返事は?」
「え、あ、男だぞ」
「そうだな」
「身長もお前と同じくらいだ」
「ああ。丁度いいよな」
「性格はこんなだぞ?」
「知ってる。好きだ」
「……」

 自分の中の何かに抗うように自虐的ともとれる疑問を問い掛け、けれど、荒川らしくもない甘い言葉に返されてしまう。
 次の言葉を探して視線をさ迷わせていると、頬に添えられていた手が動いて指先が開閉を繰り返していた俺の唇に触れた。

「ここ最近ずっと隣にいたんだ。全てとは言えないがお前のことは知ってる。知ったからこそ長谷部、お前を好きになった」

 お前もだろう?そんなふうに聞かれれば勝手に唇が『すき』だと言葉を呟いてしまった。
 これも荒川の魔法だろうか、と頭に過ったけれど、言葉にしてから溢れてくるこの感情は決して強制的なものではないと、頭ではない違うどこかでわかっていた。きっと無意識の行動。

「荒川、好きだ」

 だから、今度は意識してはっきりと伝えた。視線を合わせて、その言葉を噛み締めるように。

「……そうか」

 当然のように頷いた荒川は、だけど心底嬉しそうな表情に満足した。

end

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