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「会長」
「あ?どうした」

 生徒会の人員が変わって幾度目かの会議。その中、資料に目を通していた副会長が顔をあげて声をかけてきた。
 真剣な声音に自然と自分の声も堅いものになる。

「……とても私的なことなんですが」
「なんだ、言ってみろ」

 室内にいた他の役員も興味津々といったように副会長の方を見る。そうすると副会長は少し言いずらそうに視線を彷徨わせた後、意を決したように口を開いた。

「その、風紀委員長とはどのような関係なんでしょうか?」
「……はぁ?」

 何の話だと首を傾げると、「そういえばそうだよねぇ」という会計の声が重なった。副会長の反対側に書記と並んで座る会計は身を乗り出して好奇心に溢れた視線を寄こしているが、どう答えれば良いかわからずに副会長に視線を戻す。
 アイツに会いに行くときは誰にも気付かれないようにしてたのに、どこで知ったのかと考えてすぐに裏庭がこの生徒会室から見えることを思い出した。

「あー、知り合い以上の『微』友達……?」
「『微』ってなにー?」
「……いや、俺が友達だと思ってても相手がどう思ってるかわかんねぇから」

 実際、アイツが俺と会話してくれるのは気落ちしているところを見ているからだろうし、何よりあの騒動以前の俺たちの関係はとても良いといえるものではなかった。
 廊下や食堂で会えば無視られ、会議の時でさえ俺の顔も見ずに明後日の方向に視線をやりながら面倒そうにしていた。それを思い出すと今のこの状態は奇跡に近いかもしれない。

「そうですか。……てっきり僕はもう少し近しい関係にあるのかと思っていました」
「あ、俺もー」
「……はあ?」

 思わず間の抜けた声を出してしまうが二人はかまわずに、なぜか俺と委員長が恋人関係にあるということを前提に会話を進めていた。

「だってさ、こっから見たとき委員長の雰囲気がいつもと全然違うように見えたからー」
「会長も、いつもの横暴さがなりを潜めて大人しい感じでしたしね」
「借りてきた猫?うーん、というよりは安心しきった感じ?だから友達というよりは恋人かな、って思ったー」
「そう思いますよね」
「思うよねー」

 仲良く言いあってるが、会話が会話で耳をふさぎたくなる。だがその前に、俺達が付き合っているなどという誤解を解かなくては俺の暇つぶしに付き合ってくれているアイツがかわいそうだ。

「あのな、お前ら」
「でも、会長があんなに気楽にしてるとこってあんまり見れないよねー」
「そうですね。生徒会に入ってみて初めて会長が笑うとこを見たときは思わず写真を撮って額縁に入れて飾ろうかと思いましたし」
「……オイ、お前ら。実際のとこ、どうなんだ。俺のこと、きちんと人として見てるか?」
「ん。大丈夫。会長は人間」
「当たり前だ。っていうか久しぶりにお前の声を聞いた気がするぞ」

 コクコクと不安定に頷きながらも断言してくれた書記。少しの感激を覚えながらも、書記の声を久しぶりに聞いて少しだけ驚いた。少しだけな。

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