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 一人だけ、その紙の正体に気付いた冴野が声をあげた。その紙を、否、その資料を纏めたのが自分であったからだ。

「まつば、とおや?」

 顔写真と細かいプロフィールが載っている、教員の資料。
 そこには写真が貼られていて見ただけで染めたとわかる、金の髪の青年が笑顔で映っていた。この学園に配属される予定の新任教師らしい。紙から目を離し、鹿野を見る。

「そいつの世話、任せた」
「……は?」

 ぽかりと目を丸くする。まったく持って、予想していなかったセリフに神田直人は絶句した。


 
* * * * *



 気温は五度。その寒い中、コートだけという軽装備で遠矢は立ち尽くしていた。
 指定された場所に着いてから約三十分。未だに配属された学園からの迎えがこない。
 駅に着いた時点での連絡では、案内のために生徒を寄越すと言われたが、あまりにも遅い。

「んー……電話して、確認するかな」

 足元においたボストンバックを肩に担いで、公衆電話を探す為に辺りを見回した。と、すぐそこのコンビニ前に公衆電話が二台。

「お、みっけ」

 小走りで駆け寄る。ボストンバックの一番小さいポケットから財布を出そうと探る、が。

「……あれ?え?あれ……財布!?」

 探っても、指先に当たるはずの固い感触がない。慌ててその場にしゃがみこんでバックのチャックを開いた。
 着替えや本などの荷物をかき分けて中身を探すが見つからない。

「……何してるんだ?」

 落としたのか?朝はあった。駅でも開いた。え?どこ?と頭を抱える遠矢の背後から声がかかった。

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