淡雪の夜

『高等部一年三組、赤井雅。二年一組、神田直人。二組、冴野蓮、竹村竜樹。七組、湯木潤一郎。今すぐ生徒会室へ。繰り返す――』

 スピーカーから流れる生徒会会長の低い声。その瞬間に教室のそこかしこから嬉しげな黄色い声が沸き上がる。

「……?」

 呼ばれたうちの一人、神田直人は首を傾げながら、他に呼ばれた人物の名に耳を傾けた。
 どうやら他の人物達は生徒会関係らしい。しかし生徒会役員でもない自分が呼ばれたことに、少なからず疑問を持ちつつも生徒会室へと向かった。


* * * * *



「……呼ばれなくてもここにいるけど」
「俺もおるで?」
「……」
「はいはーい!俺もー!」

 流れた放送を聞いて、元から生徒会室にいた生徒達は自己主張をするようにそれぞれ声をあげる。

「あ?」
「しかも神田くんまで呼んで、何考えてんだ?」

 ぱちん、とホチキスで紙の束を纏めながら冴野が聞いた。

「……アレが来てからだ」

 視線さえもずらさずに鹿野はその質問を流す。これはもう一度聞いても答えはないな、とため息をついて冴野は肩を竦めた。

「……竜樹、これ、そこに置いて」
「ほいほーい」

 最後の書類を纏め終えると、冴野は竹村へと渡す。竹村は渡されたそれを流れ作業のように、種類別にわけた書類の山の上に搭せた。

 ――コンコンッ

「失礼します」
「……入れ」

 小さいノックの後、生徒会室についた神田が不信そうにし首を傾げながら入ってきた。

「よく来たな。まぁ、座れ」
「座れって言われても……」

 室内を見て神田は戸惑うように会長である鹿野を見る。生徒会室にあるイスは現在、全て使われていて座ろうにも座れない。

「ここ、座りぃ」

 大きめのソファーに腰掛けて今まで何も話さず、空気のように溶け込んでいた副会長の広田が立ち上がり会長席に座る鹿野の後ろへと移動した。

「あ、すみません」

 大人しくあけてくれた場所に腰掛ける。

「……」

 広田の隣に座っていた赤井は、自然と神田との間をあけた。それに気付くがまぁいいか、とデスクにいる鹿野に視線を投げ掛ける。

「で、用はなんですか?」

 他の生徒会メンバーも鹿野を見る。
 その場にいる全員の視線を浴びながら、まるで気にも止めていないように一枚の紙を広田へと渡した。そしてそれは神田へと手渡された。

「……?」
「それ……」

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