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 知己が眠ったのを確認して、ふぅ、と深くため息をつく。
 会長達が仕事をしなくなってからだいぶ経った。一人では多すぎる量の仕事を、知己は何とか処理しようと頑張っている。
 今まで一緒に生徒会を運営してきた仲間を信じたいのは、理解できなくもない。けれど、食事や睡眠を満足に取れない程に身を削り頑張っても、会長たちが己で現状を理解して目を覚ますことは無いだろう。
 あまりにも盲目的に一人に執着し過ぎた彼らを待つのは、破滅だけだ。知己には教えてないが、風紀委員長は駒を動かしはじめている。実際に、俺も委員長から逆恨みした役員から知己が何もされないように護衛を任されてるわけで。知己以外の役員が失脚するのは遠くない先の未来。
 その時の知己の心情はきっと計り知れない。優しいから自分を責めるかもしれない。

「……バカな奴らだ」

 知己の髪に指を通し、さらさらと零れるのを眺めながら役員の顔を思い浮かべる。
 奴らが蔑む親衛隊の存在理由を知らず、あんなにも切実だった言葉を理解しようともせず。自分たちを棚にあげ、何を得ようというのか。
 目の前にある歪な瞬きの幸せが、この先も続くと考えているのだろうか。
 まぁ、あいつらがどうなろうが知ったことではないが。苛立つのは、知己にすべての責任を押しつけたこと。怠惰にも程がある。
 一ヶ月前より大分痩せた身体を抱き締め、ふつふつと沸き上がる怒りをどうにか諌めた。

「……もって一週間、だろうな」

 もう猶予は残されていない。どう足掻こうとも奈落の底まで失墜した信頼はもう戻らないだろう。自業自得だ。
 だからこそ水面下で行われていることを、知己には知らせない。生徒会役員を通さずとも、風紀の一筆があればリコールの許可を取ることができる。

「ごめんな、知己」

 役員たちの信頼を回復させようと頑張っている知己に罪悪感は残るけど、日に日に疲労が目に見えていく様子にこれ以上は対策を講じずにはいられない。
 深く眠りに落ちている知己の頭を撫でて、ベッドから降りる。眠っている間にできるだけ書類の処理をしよう。
 最後に知己の額にキスをして、眠りの気配が残る部屋から出た。


end

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