わんこの昔話

 彼に出会ったのは、本当に偶然の出来事。俺があの時、あの場所にいなければ。彼があの時来なければ。交差しなかった運命。


 俺は梅の木の写真を撮る為に裏庭にいた。
 ポラロイドとデジカメで交互に撮っていた時。がさりと背後でした気配に振り返ると、見知らぬ生徒が二人立っていた。

「こんにちは」
「……こんにちは」

 ゆっくりと近づいてくる生徒に、妙な気配を感じデジカメをケースに入れてポケットに戻す。
 なんだ、コイツ等?

「えーと……?」
「君には用はないんだけど……ココにいられるのは、面倒なんだよね。早くどこかに行ってくれないかな?」
「あ、ここに僕等がいた事は忘れてね」

 そうか、この二人は『親衛隊』か。入学当初から良く聞く制裁の件なんだろう。どうするか。別に誰が何されようと関係はまったくないけれど、寝覚めが悪くなる気がする。

「ちょっと、聞いてるの?せっかく親切で言ってるのに」
「あ、もしかして僕等が怖いとかぁ?大丈夫だよ。君には何もしないから」

 くすくすと笑う様子は、まるでいじめを楽しむ女子生徒のよう。あまり関わりあいたくないタイプだ。
 困ったなぁ。きっと後からガタイの良い奴も来るんだろうし、どこかへ行ったふりして風紀を呼ぶべきか。でもこの二人には面が割れてるし……。

「ほら、さっさとどっかに行ってよ」
「もう、頭おかしいの?」

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