ゴーイングマイウェイについていけない

 弥生と二人でのお昼。のんびりゆったり弥生の教室で。時々、白ちゃんと黒ちゃんが来て4人で楽しく食べる。
 そんな事が日常だったのに。

「マリモ退いてー。弥生の隣は俺。俺の場所」
「マリモじゃないって!俺は「弥生、卵焼きちょうだい」
「ん、ほら」

 弥生の隣に無理矢理割り込んで、弥生の弁当箱に入っていた卵焼きをねだる。
 箸で差し出されたそれをぱく、と食べると弥生とは反対側からうなる声が聞こえた。

 今はこのとおり、なぜか変な物体がいる。しかも凄く面倒なタイプ。


 弥生との約束を破ってしまったあの日、俺はこのマリモと出会ってしまったのだ。最初はただの変なやつ程度の認識で、だがしかし。コイツを甘く見てはいけなかった。

 ――ああ、もう。どうにかなんないかなこのマリモもどき。頭のてっぺんから緑のペンキを流してやろうかこの野郎。

 思いだすだけで、何とも言えない怒りがふつふつと沸き上がってくる。
まず最初。出会いはせんせーのお使い。荷物を教官室へ持って行く最中。階段の曲がり角で前が見えずごっつんこ。コレは俺も悪いがコイツも悪いはず。何故か俺が怒られ、謝らされた。むかついたけど大人の対応を目指してがんばった。ココは褒めてもらいたい。んで上から目線で許してもらった。
 なのに。後から来た連れらしい2人組にぎゃんぎゃん言われた。片っぽは不良。もう1人は爽やか系。あんま関わりたくない人種というか……、うんまぁ、美形だった。弥生には負けるが。でも1つ言いたい。
 俺だけが悪いのか。あんたら見てなかっただろこの野郎!!

 色々言いたいこともあったが、なんか面倒だったからスルーして、名前聞かれたから八つ当たりも含めてせんせーの名前を使った。どんまいせんせ。俺をパシリに使うからだよ。
うん、ごめん。
 そんなわけで誤魔化してみたけれど、敵は次の日に目の前に現れた。話を聞いてみれば俺の後をつけていたと言う。え、何ストーカーですか?
 間に合ってます。俺は弥生のストーカーをするので精いっぱい……、ごめん弥生睨まないで。嘘だから。こいつらみたいに後つけたりとかしてないから。

「だから言っただろう、寄り道するな話をするなと」
「さすがにせんせーの話は聞かないと可哀想じゃん、色々と」
「……普段の行いが悪いんだろ」
「ひどい!」
「オイ!俺を無視すんなって!!」
「そこの不良クン。早くそのマリモどっかに連れてって」
「俺に命令すん「じゃないと不良クンの髪の毛……バリカンで剃るよー」
「なっ!?」

 いい加減頭に来て、目の前に座って睨んでくる不良クンに唸る。
 ちなみに、席配置を説明すると俺の右に少し不機嫌そうな弥生、左にぷっつんのマリモ。左前に俺の発言にオドオドの不良クンで右前にジーっと見つめてくる爽やかクンがいる。空気悪いねぇ。

「……言っておくが、あまねは有言実行だ。言ったからには本当にやるぞ」
「な、何でオマエがそんな事言えるんだよ!?」
「弥生は知ってるからねー」
「まぁな」
「何を!?何知ってるんだよ、俺にも教え「マリモうるさい」
「マリモじゃねー!!」

 はぁ。白ちゃんと黒ちゃんに来ないようメール打っておいて良かった。あの子たちを巻き込むわけにはいかないからな。かわいい子は守らないとな。
 にしても、食堂で食べるとかこいつら馬鹿じゃないのか。マリモをこんなとこに連れてきたら目立つだろ。弥生も不機嫌になんだろ。もう不機嫌だけど。部屋に帰ってからが怖いんだよちくしょー。
 むしろ弁当を持ってきてるやつを何故食堂に誘うんだよ。どう考えても変だろ。

「……バリカン、持ってたかな」
「ちょ、見た目によらずこえーよアンタ!」
「失礼だ「見た目ー?俺の見た目ってどんな?大人しそうに見えんのー?ね、弥生」
「そうだな、僕には馬鹿にしか見えない」
「人の話は「ひでぇ!でもそんな弥生も好きだー」
「エスなのかエムなのかはっきりしろ」
「弥生限定でエムで」
「……そうか、わかった。部屋に戻ったら楽しみに「うん、嘘だから。ごめんね」

 口の端をあげて流し目をした今の弥生はかっこよかった。でも怖かったです。
 むしろ俺がバリカンで刈られそうな雰囲気だったよ。やっぱり俺の中で弥生が一番逆らっちゃいけない人物だと思う。不良クンとか見た目怖いけど、なんか貧乏くじ引くタイプだと思う。あ、爽やかクンは別として。だってコイツ怖いというより視線がしつこくてウザイわー。かわいそうだから言わないでおいてやるけど。

「ん?何か俺のことで失礼なこと考えなかった?」
「何、被害妄想?」
「聞けってばーーっっ!!!!」
「「「うるさい」」」

 異口同音でマリモの言葉をぶったぎる。……ん、あれ?弥生と俺ともう1人いたような?
 首を傾げながら出所を探していると、ある人物と目が合った。しかもその瞬間勢い良く目をそらされた。

 え、え?!何、今のってオマエだったわけ?
 気付いたのは俺とびっくり目な爽やかクンだけだったらしく、弥生は興味無さそうに弁当を食べるのを再開し、マリモはまわりをきょろきょろしていた。


(へーえー?何どういう事?)(……こ、こ、こっち見るんじゃねー!!)


end

[←前へ 戻る 次へ→]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -