*Let's go!京都 day3

 修学旅行は日程3日目。今日はグループ行動だ。クラス関係なく4〜6人のグループに分かれての行動になる。私の場合は、当然というか何というか……。

「ホラるー。早く行くよっ! 準備出来た?」

 なっちんの張り切る姿は定番だ。

「おい葉月ー。まだ寝とるんか? 置いてくで〜」(似非関西弁ごめん☆)

 なっちんがいればもちろん姫条くんもいる訳で。

「起きてる。……まだ眠いだけだ」

 やっぱり珪くんは相変わらずだ。

「んで、何処行くの?」
「そういうんは、るーちゃん担当やろ?」

 ちょっと待って。そういう問題!?

「ちゃんと計画表作ったでしょ? ホントに2人とも適当なんだからっっ」
「まあいいじゃーん。……何? 二条城?」

 計画表を広げると、最初の目的地は二条城。

「問題。二条城を建てたのは?」

 突然珪くんが問題を出す。私には答えるな、って感じに目配せをしてくる。

「……誰よ? 姫条」

 ああ、この2人には酷な問題かも。

「あー。えーとー」
「姫条! あんた関西人でしょ!?」

 なっちん。それは関係ないと思う。

「徳川家康、でしょ?」
「瑠宇。お前が言ったら意味ないだろ」

 仕方なく助け舟を出すと、不満そうな珪くんの声。

「もうっ。珪くんケンカする気なの?」
「いや、面白そうだったから、つい」

 全く。こんなメンバーで大丈夫なんだろうか? 不安だ……。

。。。。。

 その後は東西の本願寺を回って、東寺へ。五重塔や金堂を見て回ると、なっちんと姫条くんはグッタリしてる。

「あ〜もう。さっきからお寺ばっかじゃん! つまんない〜。だから京都なんてヤだったのよ〜」
「一応修学旅行だから、勉強に来てるわけだし仕方ないじゃない」
「るー。あんた、言うことがヒムロッチ化してきてない?」
「えぇっ!? そんなこと……もう、なっちんたら。あ、和菓子あるよ! ホラ抹茶も〜」
「何テレて話逸らしてんのよ。顔赤いわよー」

 風流に、傘の掛かった休み処を発見し。なっちんのからかいから逃れるように走る。

「よっしゃ休憩や!」
「ま、疲れたし、ちっと休みますか〜」

 張り切って休みに走る姫条くんを柔らかい表情で見つめるなっちんは、正に恋する乙女のソレで。ああ、私も先生を見てる時はあんな顔してんのかな、なんて思ったりして。
 そんな二人とは対照的に、マイペースに後から歩く珪くんは……さっきから周りをゆっくり見渡しているようだ。

「どうしたの?」
「ん? 何が?」
「さっきから何気になってるのかなぁと思って」

 賑やか担当の2人とは違い、お寺に飽きた風でもないし。

「いや、落ち着くな、と思ってた。こういうのいいな、って見て。京都みたいなとこ、俺合ってる……」

 何だ。浸ってただけだったってことか。

「そっかー。静かなとこ好きそうだもんね。……あ、そうだ。珪くんも抹茶欲しい?」
「そうだな。貰っとく」

 束の間の休息。みんなで、言葉もなくボーッと空を見上げたりして。何か、珪くんじゃないけど、すごく落ち着くなぁ〜ってマッタリと過ごした。

「……瑠宇」
「なあに?」

 抹茶の器が空になった頃、珪くんに声を掛けられる。珍しいと思いながら見上げてみた。

「……昨日、先生と一緒だったのか?」

 しまった。見つかってしまってたの? 昨日いた銀閣寺周辺は、初日の全体で回った所だから自由行動で誰も来ないと思ってたんだけど。実際うちの学校の制服は全く見かけなかったし。

「もしかして見てた? 帰りは別々だったからバレてないと思って油断しちゃったなぁ〜」
「いや……見てない。ただ、そうだったんじゃないかと思っただけ」

 うわ。誘導尋問ってヤツ!? しかもそれを珪くんにされるとは意外というか。

「内緒ね……。騒がれたら、困るの先生だし」

 私は別にいいんだけど、先生に迷惑はかけたくないもの。……今まで外で会うことなんてなかったから、周りの目を気にすることもなかったんだと、今更ながら気付く。そして。侑二くんの大変さを身を持って知った気がする。

「そういえば、珪くんは昨日何処回ったの?」
「……寝てた」
「えぇっ!? ホントに!?」

 まさか修学旅行に来てまで!? いや、あり得そうで何か笑えないんですけどっ。

「プッ……」

 堪えきれない、とばかりに珪くんが吹き出す。

「そんな訳、ないだろ。……冗談だ」
「えーっ? もうっ! 本気にしちゃったじゃない〜」

 だから珪くんだとシャレにならないんだってば。信じちゃったじゃないのよ。軽く睨んで見せると、何故かすごく嬉しそうに微笑んでいて。……うわ〜そんな無邪気な笑顔見せられたら、ドキッとしちゃう。そう。いくら私の好きな人が先生でも、こういう気持ちは別物なんだ。

「昨日は嵯峨野の方、ブラついてきた。空気が澄んでて気持ちよかった」
「嵯峨野かぁー。珪くんらしい選択だね」

 その様子だと、やっぱり一人だったみたいだ。うん、珪くんらしい。しかもそれだけで絵になってそう。見たわけじゃないけど、そう思う。

「ねぇるー。そろそろ次行く? 何処だっけ」
「あ。こんな時間かぁ。そろそろ待ち合わせの時間だな〜」

 なっちんの質問で我に返り、腕時計に目をやれば。えっ……? と反応する3人。

「つかぬことを伺いますが、誰と?」

 なっちんが、小声で聞いてくる。

「あーそういえば、言ってなかったっけ。京都御所行くんだけど、未成年だと保護者いないと見せてもらえないの。だからね……」

 言いかけたところで。

「ヒムロッチでしょ!」
「ヒムロッチかい!」
「先生?」

 口々に言い当てられる。

「ピンポーン♪みんなすごーい。よく分かったね」
「分かるってば……葉月が分かるくらいだもん」

 珪くんも頷いてるし……。

「ま、いいや。そういう訳で、現地集合なの。行くよ〜」

 ……大人と一緒じゃないと見られないんだもん。いいじゃないの、ねぇ? そりゃ、先生と一緒なのが一番のポイントだけど。

「どうせなら2人で行ったら?」

 無責任ななっちん発言。

「それだと、グループ行動にならない」

 珍しく珪くんが反論する。

「はいはい。行けばいーんでしょ? 行けば……」

。。。。。

 京都御所の前で、先生と合流する。渋々だったなっちんも、いつの間にか先生と話したりしてて……ちょっと、ホッとした。せっかく来たんだからみんなで楽しみたいし。

「瑠宇。京都御所、来たかったのか?」
「あ、珪くん。……うん。本当は一般公開してたら普通に入れたんだけどね」

 秋は10月しか見られない、って書いてたし。

「お前好きそうだよな、こういうところ」

 あ……また笑顔だ。何か最近の珪くんって、男の子なのに色っぽくなってる気がする。

「珪くんも好きなんじゃない? 静かだし」

 気にしないように、話を続ける。

「ああ……好き、だな」

 ドキッ。何で、そこで私を見るの? う〜静まれ! 私の心臓!!

「榊。拝観の順路だが……」

 え、先生!? ハッ、と顔を上げる。瞬間……先生と珪くんの間に何やら妙な空気が流れた。

「つ、次はこっちでしたよね!」

 その空気に耐えきれず、わざと明るく振る舞い先生の隣へ走る。

「そうだな。では行こうか」

 どうしよう。もしかして、珪くんと先生って仲悪かったの……? 真面目に悩んでた私だったけれど。

「バカねぇ。そんなの葉月がるーのこと好きだからに決まってるじゃない」

 後でなっちんに相談したら、断言されてしまった。

「け、珪くんが!?」
「気づいてないの、多分るー本人くらいじゃない? 前々から知っちゃいたんだけどさ〜。あんましるーが鈍いから、どうしたもんかと思ってたのよね。いい機会だから知っときなさいよっ」

 頭の中はパニック状態。

「私……珪くんの前で先生のこと、のろけちゃってたかも」
「んー、だったよね。可哀想な葉月王子〜。ま、るーの鈍さじゃしゃーないっしょ」

 そんなこと言ったって〜!!

「まあその前に。葉月と言わずとも、るーのこと狙ってる男共はたっくさんいるけどね」
「……はい? 何それ」

 目が、点になる。

「最近のるーは特にキレイになったもん。やっぱり恋してるからかしらねぇ〜誰かさんに」

 ニヤリと笑う。……誰かさんって、まあ先生に決まってるけど。

 明日は先生との楽しい嬉しい自由行動、の筈なのに。早く寝なきゃ、なのに。頭がパニックでもう何が何やら……。



────Even if someone gets wounded because of this desire,
it is not possible to transfer it.

(だって、溢れ出しそうなくらいに好きだから)



2009,October,13th. ; rewrite @ Ruri.Asaoka.



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