「新しい塾生の杜山しえみさんです」
奥村雪男が塾生たちの前で紹介したのは、この世界のヒロインの杜山しえみだった。杜山しえみは顔を赤く染め、吃りながらよろしくと挨拶をして奥村燐の隣に座った。
そういえば、私が物語を知っているのはここまでだったような気がする。確か、ここで一巻が終わったんだ。
もしこの世界に来ることがわかっていたら全巻読んでいたのに、と今更ながら後悔した。
しかしキャラクターは大体把握しているからまだ助かった。
まぁ、でも、物語はわからないからこそ面白いのかもしれない。これから先は何が起こるかわからない。
誰にも気付かれないよう口角を上げた。
…楽しいことがあるといいなぁ。
「苗字 名前、15歳。一人っ子で両親は二人とも事故で他界。両親が残した莫大な財産で生活している」
調べた情報が載っているファイルを読みあさり、溜め息をつく。
容姿は平凡、性格は社交的とはいえないがとくに目立ったことはなし。
本当にどこにでもいるようなこの娘。
だが私は見てしまったのだ。
魍魎たちがこの娘を助けたところを。
普通ならば使い魔で無い限り、いくら下級の悪魔だろうが人間を助けるなど有り得ないことだ。
「うーん、実に不思議で、そして実に面白い存在だ」
口角が上がるのがわかる。
彼女のことは詳しくはわからなかったが、彼女は何かを隠している。
それも、とびきり面白そうなことを。
私はそれが知りたい。
そして、私の素晴らしい駒になるかどうかを見極めたいのだ。
「さぁて、どうしましょうか」
あの、彼女からわずかに漂ってきた"甘い匂い"の正体も気になるとこですし。
ああ、楽しみです。
似た者同士
(まだそのことをお互いに知らない)
奥村雪男が塾生たちの前で紹介したのは、この世界のヒロインの杜山しえみだった。杜山しえみは顔を赤く染め、吃りながらよろしくと挨拶をして奥村燐の隣に座った。
そういえば、私が物語を知っているのはここまでだったような気がする。確か、ここで一巻が終わったんだ。
もしこの世界に来ることがわかっていたら全巻読んでいたのに、と今更ながら後悔した。
しかしキャラクターは大体把握しているからまだ助かった。
まぁ、でも、物語はわからないからこそ面白いのかもしれない。これから先は何が起こるかわからない。
誰にも気付かれないよう口角を上げた。
…楽しいことがあるといいなぁ。
「苗字 名前、15歳。一人っ子で両親は二人とも事故で他界。両親が残した莫大な財産で生活している」
調べた情報が載っているファイルを読みあさり、溜め息をつく。
容姿は平凡、性格は社交的とはいえないがとくに目立ったことはなし。
本当にどこにでもいるようなこの娘。
だが私は見てしまったのだ。
魍魎たちがこの娘を助けたところを。
普通ならば使い魔で無い限り、いくら下級の悪魔だろうが人間を助けるなど有り得ないことだ。
「うーん、実に不思議で、そして実に面白い存在だ」
口角が上がるのがわかる。
彼女のことは詳しくはわからなかったが、彼女は何かを隠している。
それも、とびきり面白そうなことを。
私はそれが知りたい。
そして、私の素晴らしい駒になるかどうかを見極めたいのだ。
「さぁて、どうしましょうか」
あの、彼女からわずかに漂ってきた"甘い匂い"の正体も気になるとこですし。
ああ、楽しみです。
似た者同士
(まだそのことをお互いに知らない)