明日晴れるかな | ナノ


この世界にやってきて、早三日が立とうとしていた。
三日過ごして驚いたことがあった。

一つ目、通帳に入っているお金の額が半端じゃなかった。
あんな大金、どう使えというのか。
もしかしたら一生遊んで暮らしたって余るかもしれないほどだ。

二つ目、どうやら私はこの世界での家族がいないらしい。
いないというより、いなくなった。
近所のおばさんたちが噂していたのを偶然聞いてしまった。
不運な交通事故で二人とも亡くなってしまったらしい。
まぁ、どうせ親になんてなんの思い入れなんてなかったから気にしてはいないのだけれど。

三つ目、どうやらここは漫画の世界らしい。これには私もビックリだ。
前に一度だけ読んだことがある漫画で、主人公の名前は確か奥村燐。魔神の落胤で双子の弟がいる。
あとは登場人物を何人か覚えている程度で、ストーリーは最初の方しか覚えていない。

また、どうして、そんな非科学的な漫画の世界なんだろうか。
炎だとか、悪魔だとか。
私はただ平凡に生きたいだけなのに。
まぁトリップした時点でかなり非科学的なんだけどね。

そしてどうやら私は正十字学園に通うらしい。しかも、祓魔塾にも行くことになっている。
今朝、正十字学園から学校と塾の案内が届いていた。


「面倒事は、嫌いなんだけどな」


ぽつりと小さく呟く。
大丈夫、きっと大丈夫だ。
キャラクターとさえ関わらなければ、平凡に生きていけば、大丈夫。
私はこの世界ではイレギュラーなんだ。
私が何もしなくてもこの世界は綺麗にぐるぐると回っている。
反対に、私が何かしてこの世界がおかしくなっても困る。
私は、この世界では傍観者なのだ。
干渉してはいけない。すべてのものに対して一線引かなければならない。
それは義務のようなものだ。


「明日、か…」


それは、何かが始まる日であると同時に、何かが終わってしまう日であるような気がした。
明日から始まる非平凡な日常には、期待もあったが不安のほうが勝っていた。

わたしは、臆病者だから。



変わっていくもの
(あっけなく儚いものなんて)


 


 

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