明日晴れるかな | ナノ


真っ暗な闇の中で、ぼんやりとした柔らかな光が見えた。
その光は段々と大きくなり、やがて私を暖かく包み込んだ。


「…ん」


気が付けば私は天井に手を伸ばしていて、寝ぼけていたことに気が付いた。
腕を降ろしていつもと違う天井を睨みつけた。
…って、いつもと違う天井?

(っまさか…!)

感じた違和感に勢い良くベッドから立ち上がり部屋を見渡す。
カーテンを開けて外を見てみる。
そこに広がる景色は、いつもと全然違っていて、見たことのない部屋だった。
私の脳内はパニックだった。
なんで、どうして、こんなことに。
考えても考えても出てくるのはぎもんばかりだった。
そこでハッとした。
アンケート。そうだ、あのアンケートに答えて、急に眠たくなって、目が覚めたら全く知らない部屋にいた。
つまり、アンケートになにか原因があるのでは。

私はすぐさま枕元に置いてあった携帯を開いた。
新着メールが1件届いているのを見て、私は何故か寒気が走った。
ごくりと唾を飲み込み、そのメールを読む。

"ご当選おめでとうございます。
この度、苗字 名前様に異世界行きのチケットが当選しました。
戸籍とお金のほうはささやかながらこちらでご用意させていただきました。
また通帳と印鑑はベッドの近くにある棚の上から二番目にありますのでご自由にお使いください
返信不可"


「―――は、はは、」


渇いた笑いしかでなかった。
全身から力が抜けて力なくベッドに座り込む。
なんなんだ、これ。
まさか、そんな。
異世界なんて、ないと思っていた。
まだ実感がないけれど、頭に痛みが走っているから、これは間違いなく現実で。


「…っ」


違う世界というのは世界は間違いなく私が望んだ世界だ。
だから、私の願いが叶って嬉しいはずなんだ。
なのに、なぜか、涙が溢れ出てきた。
溢れ出てきたのはそれだけではなかった。虚無感、喪失感、怒り、悲しみ、その他もろもろ、とにかく色んな感情が私の中を支配していった。
涙が止まらない。
私の頬を濡らし続ける。
これが世界を捨てるということなんだ。
――世界を捨てるというのはあまりにも馬鹿馬鹿しく、あまりにも酷なことだったんだ。
私はしばらく泣き続け、いつの間にか疲れて眠ってしまった。
これからはたして私はどうなるんだろうか、そして、この世界はどんな世界なのだろうか。
私が望んだ世界なのか、前と変わらぬ世界なのか。

まるで私は、広い迷路の中で迷子になってしまったような感覚に陥った。



迷子の迷子の子猫ちゃん
(わたしのおうちはどこですか)
 


 

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -