明日晴れるかな | ナノ


アタシが祓魔師になった理由は、名前だった。
獅郎からも祓魔師になれと何度も言われていたが、アタシはなにぶん面倒臭がり屋だから、そんな面倒臭いもんにはこれっぽっちもなりたくなかった。
ただ、力が欲しかったから獅郎に弟子入りしただけだった。

だけど、ある日アタシは獅郎の部屋にあったとある書物を見た。
普通よりいささか薄いその本の中には鍵、夢、扉について詳しく書かれていて、最初は意味がわからなかったけど、ある1ページに書いてあった魔法円を見て私は驚いた。

その魔法円は、たしかに名前を引きずりこんだ魔法円だったから。
そこでアタシは理解した。
もしかしたら名前はこの本に書かれている扉という存在で、何者かに夢に閉じ込められたのではないのかと。
そしてもし名前が扉なら、名前を連れ戻すにはこの鍵と呼ばれる刀が必要。
名前に会える希望が芽生えた。

この鍵という刀はどこにあるんだと獅郎に聞けば、ヴァチカン本部で保管されていると獅郎は答えた。
―――ヴァチカン本部。
つまり、もしかしたら名前と会うためには必要かもしれないこの刀は、祓魔師になり尚且つ優秀な成績を納めなければ手に入らない。

その日からアタシは、祓魔師になるために様々なことを今まで以上に勉強し、修業した。
そしてついにアタシの実力は認められ、鍵を手に入れて名前をこっちに連れ戻した。


「名前ー来たぞー」
「シュラっ」


腰にギュッと強く抱き着いてくる名前の頭を撫でる。
名前の温もりを感じると、自然に頬が緩んでしまう。


「名前ー」
「んー?」
「アタシな、お前に会うためにいっぱい頑張ったんだぞ。なんたってお前に会うために祓魔師になったんだからにゃ」


そう言うと、名前は目に涙を溜めながら満面の笑顔を向けてきた。
今はこうして一緒にいられるけど、きっといつか名前はアタシより大事な存在を見つける。
そうすると名前の隣はアタシじゃなくてそいつのもんになる。
そうじゃなくても、アタシは祓魔師だからいつ死んでもおかしくない。
そうなってしまったら、名前はアタシを忘れてしまうんだろうか。


「シュラ」
「んにゃー?」
「シュラはね、なにがあっても私の大事な人なんだよ」


本当に名前は優しいヤツだ。
それがアタシの思考を読み取ってかどうかは知らないけど、名前はたいていはアタシの欲しい言葉をかけてくれる。
奥村燐は名前に惚れている。
志摩と雪男も名前を気にしていた。
名前は自分は人に好かれるような人間ではないと思い込んでいるが、アタシはそれは間違いだと思う。
今まで名前を散々な目に合わせてきたヤツらは見る目がなかったんだ。
名前には人を惹き付ける何かがあるとアタシは思う。
きっと、これから名前はたくさんの人間を救っていくと思う。
そんな自信がなぜだかあった。


「名前」


名前の隣が誰かに奪われる日までは、名前の隣はアタシが貰っておこう。
まあー、名前の隣はそう簡単にあげないけどな!
アタシを倒せるぐらいのヤツじゃねぇと、アタシは認めねぇぞ!


「おまえは幸せになれよ、名前」
「……うん。シュラも、絶対ね」






未来はどうであれ
(今はどうかこのままで)


 


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