明日晴れるかな | ナノ


今日の神木さんは、いつもと違っていて、なんだか調子が悪そうだった。
授業で話を聞いていなかったり、暗唱に失敗したりと神木さんらしくなかった。
まぁ原因があるとするならば、やっぱり塾をやめてしまった朴さんだろうか。
そして、それに比べていつも通りすらすらと勝呂が暗唱してしまったのがいけなかったのか。
勝呂と奥村燐、神木さんと杜山さん、次は神木さんと勝呂。
そう、二人は神木さんの一言で言い争いになっていた。
どうしてこんなに相性が悪いのだろうか、この塾生たちは。
正直、面倒事は起こして欲しくない。
面倒臭いから。


「じゃあお前は…何が目的で祓魔師になりたいんや…あ?言うてみ!」
「目的…?……あたしは他人に目的を話した事はないの!あんたみたいな目立ちたがりと違ってね」


そして結局、一番の被害者は何もしていないのに巻き込まれてしまった奥村燐だと私は思った。

















「皆さん、少しは反省しましたか」


結局、あのあとタイミング良く来た奥村雪男に怒られた私たちは囀石を膝に乗せられ正座させられていた。
ああ、もう足が痛い、正座なんて普段やらないし、あー本当にイライラする。
そして"祓魔師は一人では戦えない"と私たちに教えてから奥村雪男は三時間程度任務に行くと私たちに囀石を乗せたまま出ていってしまった。


「…山田くん、足辛くないの?」
「いんや、別に」
「………さすがだね」


隣に座るシュラのフードを覗き込めば確かに平気そうな顔をしていた。


「つーか誰かさんのせいでエラいめぇや」
「坊…」
「は?あんただって、あたしの胸ぐらつかんだでしょ?信じられない!」
「頭冷やせいわれたばっかやのに…」


また喧嘩している勝呂と神木さんに、やっぱり巻き込まれてる奥村燐を見て思わず溜め息をついた。
本当に学習しないんだから。
しかもこのイライラしてるときに限って、ああ、もう、嫌になる。


「本当、子供」
「はあ?」
「そうやって何でも突っぱねて独走して、プライドが許さないのもわかるけど、もう高校生なんだからいい加減少しは周りに合わせることを覚えたほうがいい」
「っ、あんた何様のつもり!?」
「神木さんこそ何様のつもりですか」


他の皆も私がそんなことを言うとは思っていなかったのか、驚いた表情をして私を見ていた。
そして嫌な沈黙の中電気が突如消えた。
いきなりのことに周りがパニックになって、そのことに気を取られていると、ハッあることに気付いた。
膝にあった囀石の重みが消えている。
ひとまず携帯を開いて機能でついていたライトをつける。
外は明かりがついているので停電ではなさそうだ。


「廊下出てみよ」
「志摩さん気ィつけてな」
「ふふふっ、俺こういうハプニング、ワクワクする性質なんやよ。リアル肝だめし……」


志摩の言葉が途切れた。
そりゃあ誰だって喋れなくなるに決まっている。
だってドアを開けたらグロテスクな容姿の屍がいるんだもの。
志摩は現実から目を逸らしているけれど、このままでは確実にやられてしまう。
気が付いたら叫んでいた。


「志摩くんドアから離れて!」
「うぉおお!?」


なんとか危機一髪で屍の腕から逃れた志摩を見てひとまず安心する。
けれど、そんな安心はいつまででも続かない。
屍が扉を突き破り部屋へと入ってきて自らの体液を皆へ被せたのだ。
もちろん、私も、シュラも。
けれどシュラは今は露出が少ない格好をしているから大丈夫そうだ。
私も顔と足に少し掛かっただけ。


「ニーちゃん…!、ウナウナくんを出せるっ?」
「ニーッ」


ひとまず杜山さんの使い魔が出した"ウナウナくん"とやらで木のバリケードを作ったけれど、杜山さんは屍の体液を多く被っていたような気がする。
だから体力の消費はいつもより早いはずだからバリケードは長く持たない。
ひとまず私も視界がふらふらしてきたのでパーカーの裏に隠しておいた聖水を注射器で体内へ送る。
これで少しは楽になるはずだ。


「すごい勢いでこっち来てる…!」
「屍は暗闇で活発化する悪魔やからな」
「ど、どうするよ!」


サタンの落胤であるために屍の体液が効かない奥村燐は悔しそうに歯ぎしりをしていた。
そして覚悟を決めたように木の隙間から見える屍を睨みつけていた。


「俺が外に出て囮になる。二匹ともうまく俺について来たら何とか逃げろ」


皆が止めるなか、奥村燐はそう言って木に手と足をかけて奥へと進んでいってしまった。


「…なんて奴や…」
「結局一匹残ってますけどね…イミあったんか?」


まぁ、奥村燐だったら大丈夫だろう。
あと、なにかおかしい。
この学園には中級以上の悪魔は誰かの使い魔でない限り理事長の強力な結界のおかげで入って来れないはずだ。
つまり、この屍は誰かの使い魔の確率が高いということ。
だとすれば、敵ではない。
この屍はこの学園内にいる祓魔師の命令で動いていると思う。
ということは、屍が私たちに襲い掛かってくるのは全て仕組まれている可能性が大きい。
それに、これだけの騒ぎになっているのに祓魔師が誰一人駆け付けないし。
(ああ、なるほど…ね)
本当は面倒臭いから見ていようかなと思ったけど、どうやら戦わなければいけないらしい。
"祓魔師は一人では戦えない"
つまり、そういうことだ。


「ちょっと、ま、待ちなさいよ!詠唱始めたら集中的に狙われるわよ!」
「言うてる場合か!女こないになっとって男がボケェーッとしとられへんやろ!」


勝呂が怒鳴り指をさす先には呼吸を荒くして座りこんでいる杜山さんの姿があった。
…やっぱり長くもたないか。
横を見ると志摩が錫杖を組立ていた。


「いざとなったら援護します」


…いい調子だ。
これは全員で協力しなければならない。


「私も手伝うよ」





推理力はありますよ
(もしかしたら探偵になれるかも)


 


 

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