明日晴れるかな | ナノ


「奥村くん」


先生にそう呼ばれ、また居眠りをしていた奥村燐はスキヤキといいながら寝ぼけていて、そんな奥村燐に、勝呂は舌打ちをして非難の声を上げていた。
見ていて面倒臭いことになりそうだな、と思い静かに溜め息をつく。










今日の悪魔薬学の授業は前に行った小テストが返される日。
奥村雪男が次々と名前が呼んでいくなか、所々でトラブルも起きているようだ。
例えば杜山しえみさんは植物にオリジナルの名前を付けたり、奥村燐と勝呂は点数がどうのこうのと言い争っている。


「苗字さん」
「はい」
「よく頑張りましたね。次のテストもこの調子で頑張ってください」


にこりと笑顔でそう言う奥村雪男。
返ってきたテストには100点と赤ペンで書かれていた。
私がそのテストを鞄に入れるとほぼ同時くらいに授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。











―――体育・実技の授業。
それは私が一番苦手とする授業だった。
前にも言った通り、私の運動神経は普通で、長距離を走るのは凄く苦手。
そろそろ体力作りをしなければいけないな、と思ったところで私の名前が呼ばれ、競技場に滑り降りる。
そして走って逃げる準備をしたのだが…


「…先生」
「なんだネ」
「蝦蟇が追い掛けてきません」


私も蝦蟇も立ち尽くしたまま。
忘れていた。
扉である私を悪魔が追い掛けるわけなどないことを。
先生が少し蝦蟇を刺激するも、ちっとも蝦蟇は動かない。
しばらく刺激してみるものの全く反応のない蝦蟇に先生は諦めたのか、もう戻っていいと疲れた声で言ったので私はラッキーと思いつつ、上へ上がって今は山田であるシュラの隣に座った。


「やっぱり蝦蟇は動けなかったにゃ」
「扉って最初聞いたときは面倒臭い中二設定だって思ったけど意外と便利だ」
「にゃっはははは!けどいくら襲ってこないといっても、しっかり悪魔は倒さないとダメだからな?」
「うん、わかってるよ」


と、シュラと会話をしていたら競技場から叫び声が聞こえてきて視線を向けると、勝呂と奥村燐が互いに競い合うように走っていた。
その速さと持久力に少し羨ましいと思ったのは秘密だ。
…あ、勝呂が奥村燐に飛び蹴りした。
そして先生の怒号が競技場に響く…けれど二人はそれを無視して今度は取っ組み合いになっていた。
そしてまたお互いに取り押さえられる。
いい加減学習したらいいのに。
先生に呼ばれた勝呂を横目にそう思う。


「授業再開するゾー!」


そしていつのまにか戻って来ていた先生がそう言ったそばから電話で気持ちの悪い会話をしてからまさかの授業放棄した先生に本日何度目かの溜め息をついた。
もう、なんか面倒臭くなってきた。
また奥村燐と勝呂が言い争っているのを聞くのも、もう、なんだか疲れる。
聞いてるだけなのに疲れる。
だるい、めんどい、帰りたい、眠たい。


「シュラー…」
「今は山田って呼べよ」
「どうせ誰も聞いてないよ。てか帰りたいんだけど…」
「おい。まぁアタシもだけどさあ」

「俺はサタンを倒す!」


また会話を遮るようにそう言った勝呂の言葉に神木さんは笑っていた。
そしてそれが原因なのか、心を乱した勝呂に蝦蟇が襲い掛かろうとしたが人間とは思えないジャンプ力で勝呂の前に現れた奥村燐によってそれは防がれていた。
…あ、人間じゃないんだった。
またなにかつまらないことで言い争っている二人を見ていたら、黙り込んでいたシュラが話し掛けてきた。


「なあ名前、気付いてるか?」
「あー、奥村雪男(あれ)?」
「お、気付いてたか」
「当たり前だよ。あんなに視線を感じるんだから。まぁどうせ訓練生相手だから気配を消さなかっただけだろうけどね」
「お前、蝦蟇が動かなかったアレで絶対に怪しまれたぞ」
「あ、」


やばい。
見逃してくれてればいいな、と思いつつもそんな願いは叶うはずもなかった。


「(それにしても苗字さん…なぜ蝦蟇が動かなかったのだろうか。…ひとまずこれもフェレス卿に知らせておこう)」





そしてまた、回る
(ゆっくり、ゆっくりと)

 


 

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