明日晴れるかな | ナノ


私の謎(?)がわかってから暫く経った。
まぁ、今のところ変化はないから特には気にしないことにしている。
だがそれよりも気になることがある。
それは塾では男の格好をしている霧隠シュラのこと。
私は彼、いや、彼女には関わったことがないけれど、時々だが見られているような気がする。
もしかして監視とかされてるのかな、と思ったけど、彼女の視線は探っているようなものではなく、なぜだか優しい視線だった。
なぜだろう、知りたい。
私は、どうやら一度気になってしまうと、とことん調べたくなるらしい。
けれど彼女の本心なんていくらコンピューターをハッキングしてもでてくるものではなく、彼女自身から聞かなければならない。
リスクはかなりあるけれど、気になる、ああ、気になる。
全く、関わらないと、一線引くと決めたのに、好奇心に邪魔されるなんて予想外だった。
だけど、確か彼女は後々にかなり重要なキャラだったような気がする。
でも気になる。
そう、私が心の中で葛藤していると噂の霧隠シュラが近付いてきた…というより隣に座った。


「え」


いきなりのことに思わずフリーズする。
別に、彼女とは特別親しい関係でもないし、接点があったわけでもない。
今まで一緒に座っていたわけでもないのに、いきなり、なぜ。


「あの、」
「塾終わったら裏庭で待ってる。絶対に来いよ」


そういうと彼女は、何事もなかったように元の席へ戻っていった。
一体なんだったのか。
もしかして私のことがばれた?
怪しまれてる?
だから彼女が呼び出した?
そうだとしたら非常にまずいが、まだそうだと決まったわけじゃない。
そんなことをぐるぐると考える思考回路は、入ってきた先生によって掻き乱された。
とりあえず、覚悟を決めるか。
ひとまず考えてもどうにもならないし。
そう思い、私はノートに視線を移した。























時間が経つのは早く、もう放課後になってしまった。
私は指定された裏庭に向かうと、そこにはいつもみたいにフードをかぶり、木にもたれ掛かって立っている霧隠シュラがいた。


「ごめんね、待った?」
「いや、今来たとこ」


そっか、と言おうとした刹那、いきなり霧隠シュラが高速で私の後ろに回り、刀を首に突き付けた。
(―――は、)
残念ながら私はあまり体を動かすのは得意ではないため、この人のスピードについていくことは出来なかった。
とりあえずいつ殺されてもおかしくない状況なので抵抗はしない。
嫌な汗が流れた。


「な、なんの真似ですか、山田くん」
「そんな白々しい演技はやめろ」


刀をぴとっと当てられそう言われる。
やっぱり演技だと見抜かれてたか。
これでも演技と嘘とポーカーフェースは得意だと思ってたんだけどなあ。
そう思いながら私は顔から焦った表情を消した。


「私に何のご用ですか」
「お前、6歳までの記憶がないだろう」


いきなり話が変わったけれど、そんなことを気にするよりも驚きのほうが大きかった。
なぜ、接点なんてないはずのこの女が、私の六歳までの記憶が抜けていることを知っているのか。
心臓がドクドクと大きく脈打っていた。


「なぁ、その記憶に興味ないか?」
「は、」
「知りたいなら教えてやるぞ」


…興味ない、といえば嘘になるけれど。


「なぜ私に記憶が無かったことを知ってるの?」
「……記憶を取り戻せばわかる」
「……………」


罠か、嘘か、本当か。
…罠の確率が高いけれど、もし本当だとしたら、私は知りたい。
なんでこんなに知りたいんだろう。
知っても何もないと思うのに、なんで知りたいのだろうか。
でも、なぜだかわからないけど、知らなきゃいけない気がする。
不思議に思いながらも、私は自然に頷いていた。


「記憶、知りたいです」
「よし」
「…、え」


私のそれを合図とするように、霧隠シュラは持っていた刀で私の心臓部分を突き刺した。



意識と現実の境界線
(突き刺さった刀の真意は)
 


 

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