デキちゃったシリーズ | ナノ  
 
デキちゃった



『燐…話したいことがあるの』


今すぐ私の家に来て、と***は泣きそうな声で電話越しにそう行ってきた。俺は一体どうしたのか、と訪ねたが***は電話を切ってしまった。

もしかして***に何かあったのか。それとも――別れ話、とか。それはないと思いたいが悪い想像だけがグルグルと頭の中に駆け巡った。とにかく俺は足にグッと力を込めて***の家へ向かった。足取りは、いつもよりかなり重かった。だって俺の心は不安で埋めつくされていたから。

俺がこんなに悩むなんて、もしかして人生始めてこもしれねぇ。いつも俺は行動で示していたから。考えるなんて、俺は向いていないのは自分でもわかっている。だからこう、考えてしまうと俺はとことんダメになっていってしまう。

















「***…!」


家へ着くなり靴を脱ぎ捨て***の部屋へと駆け込むように入った。***はカーペットの上に毛布に包まっていた。下を俯いていて表情は伺えないが明らかに良い話しなような雰囲気ではない。

ひとまず俺は***の前に座った。どうしたんだ?、と優しく問い掛ける俺だが、***はなに喋らない。もなにも喋らない***に俺の中の不安はさらに大きくなった。だって口を開かねぇってことは、言いづらい話しって事だろ?…くそ、なんなんだよ本当。俺は雪男と違ってこんな重苦しい空気に堪えれるほどできちゃいねぇんだよ。俺はイラつき始め***の肩を掴んで上を半ば無理矢理向かせた。


「なぁ、っ…!?」

『り、ん…っ』


***は泣いていた。綺麗な瞳からたくさんの涙をポロポロと流して俺を見上げた。さすがの俺も泣いているとは思ってなかったから少し焦りを覚えた。もしかして俺が怒っていると思ってしまったのか、それとも肩を掴む強さが強すぎたのか。再び色んな考えがぐるぐると俺の頭の中を支配していく。


『…………ちゃったの』

「え、?」


聞き取れない程のか細く儚い声で***は何かを呟いた。***はまたボロボロと涙を零しはじめ、俺にギュッと抱き着いてきた。いきなりのことにかなりビビったが***を抱きしめ返す。***は俺のシャツを握りしめ、今度は大きな声でこう言った。


『赤ちゃんが、デキたの…っ』

「―――は、」


頭が真っ白になった。***は今、なんて言った…?赤ちゃんができた…?誰の?俺の?赤ちゃん?…赤ちゃん!?

――今日は人生の中で一番考えさせられた日かもしれない。だって、妊娠、だろ?俺と、***の子が、今、***の腹にいるってことだろ?意識がクラクラとした。だってそんなのは非現実的なものだと俺は思っていたから。しかも俺はまだ17歳だから、余計にそういう実感がわかない。もう一度***の肩を抱き上を向かせた。


「本当、なのか…」

『うん…っ。今朝、検査してみた、ら、妊娠してた、のっ。ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、嫌なら、別れる、から…!、この子だけは…っ、産ませて…!!』


縋り付くように掠れた声で懇願してくる***。俺はまだ追いついていない頭を必死に働かしていた。ええっと、つまり、俺は***の彼氏なわけで、そ、そういう行為は俺としかしてない、わけで…、***がデキたって、ことは…、俺が父親な、わけで…俺が父親
………………俺が父親ァア!!?
ちょ、そんなのって……


「不謹慎だけどさ…」

『うん…っ?』

「すげぇ、嬉しい!!」


ガバッと感極まって***を思いっ切り抱きしめた。***は驚きのあまり涙がピタッと止まりキョトンとしていた。だが俺はそんな***に構わず強く強く抱きしめた。


『おこ、らないの…?』

「当たり前だ、好きなヤツの子供だぜ?嬉しいに決まってるだろ!…てか俺のほうこそ謝んなきゃな…ちゃんと、ひ、避妊してりゃあよかったのに…」

『ううん…!、私もね、嬉しかったから…!!』





ただただ嬉しかった。
抱きしめた温もりを一生守りたいと感じた。なぁ、俺はまだまだガキだけどさ、お前のこと守りたいんだ。俺と、***の子供も、***も全て俺が守ってやるんだ。腕の中にいる愛しい存在を力強く抱きしめて俺は静かにそう誓った。



 



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