ルピタとチチカナがこちらに来てから、初めての陸地。
はしゃぐルピタは先にエースと島へ向かう。

「チチカナ。俺はサッチと食料調達に向かうがどうするよい?」

「そうですわね・・・」

「一緒にいこーよう!チチカナちゃーん!」

チチカナはニコニコ笑って頷く。

三人は揃って島へと上陸した。

「うふふ。とても賑やかな街ですわね!」

「チチカナの世界には、こういう街はなかったのかい?」

「ありましたわ。けど、こちらの方が文化も、文明も進んでいるものですから・・・」


チチカナはそう言って、口元を隠しながらにこりと微笑む。


「なぁなぁ頼むよー!もうちょい安くしてちょ?」

マルコとチチカナは、街の魚売りに値切り交渉をしまくるサッチへと視線を向ける。

「ったく。サッチのやつ」

「うふふ。なんだか可愛らしいですわね。あ、マルコ隊長」

「なんだよい?」

「すみませんが、研ぎ石を買いに行きたいんですの。ここで少しお待ちいただけますか?直ぐに戻りますわ」

「わかったよい」


チチカナはそう言ってにこりと笑うと歩き出す。
自分がいた世界では、雑貨屋で買えた研ぎ石。
しかし・・・

「うちにゃあ研ぎ石なんて置いてないよ」

「あらあら。そうなのですか?」

こちらの文字が読めないチチカナがやっと見つけた雑貨屋らしき店。
しかしそこに彼女の求める品はなかった。

「どうしましょう。困りましたわ」

辺りをキョロキョロと見回すチチカナに声をかける一人の男。

「おじょーさん!困り事かな?」

チチカナがその男に視線を移す。
そこには長身で、パーマをかけた男がニコニコしながら立っていた。

「あなたは・・・どこかでお会いしましたか?」

「いいや。初めて会うよ?写真では見たことあるかなぁ?・・魔笛のチチカナちゃん」

「あらあら。それは、それは。」

チチカナの頭に、手配書の存在が過る。
しかしこの男に敵意はなく
ただにこやかに彼女を見つめるだけだった。

「で?何か困ってるみたいだけど・・・どうしたのかな?お兄さんに話してごらんなさい」

「実はですね、研ぎ石を20個ほど頂きたいのですが・・どこに売っているかわからないのです」

「あららら。そんなに?んー。じゃあお兄さんが研ぎ石売ってるところまで案内してあげましょうか」

「あら。本当ですか?助かりますわ!」

チチカナは謎のパーマ男に連れられ、キッチン用品店へやってきた。

「ここに研ぎ石があるのですか?」

「んー?そうだよー?研ぎ石は包丁を研ぐのに使うからねー」

男はそう言ってすたすたと店の奥へ、チチカナもその後を追う。

「ほら!お好きな研ぎ石をどうぞ?」

「あら。いっぱいありますわね」

様々な研ぎ石の中から、一番小さく持ち運び安い物を選ぶと
それを20個購入するチチカナ。
その間も、男はにこやかに彼女のそばで待っていた。

「ありがとうございました。とても助かりましたわ!」

「いいってことよ。それよりさぁ」

「はい?」

チチカナが首を傾げれば、男はニコッと笑う。

「良かったらこれからお茶でもどうかな?」

男がそう言えば、チチカナは困ったように笑った。

「そうですわね・・・。でもすみません。人を待たせているので」

「んー。そうかぁ。あ!おじょーさん!アイスは好きかな?」

「はい?」

男は唐突に聞いてきた。
訳がわからず間抜けな返事を返すチチカナの前に、男はジュースを取り出して見せる。

「お兄さんねぇ。ちょっと面白い特技があるんだ!」

男そう言ってジュースの蓋を外すと容器を逆さまに・・・。
地面にこぼれ落ちるかと思われたその液体が、キィンと凍ったのだ。

「あらあら!」

「はい。オレンジシャーベットの出来上がりー。溶けない内に召し上がれ」

そう言って男は、容器に凍りつき氷柱状になったシャーベットを驚くチチカナに手渡す。

「すごいですわね!貴方はまさか、アイスマンなのですか?」

「ア、アイスマン?その方はちょっと存じ上げないなぁ。まぁいいか」

目を輝かせるチチカナに、頬を掻く男。





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