村のあちこちからイビキが聞こえる。
皆黄金芋酒に潰され、深い眠りについていた。
その中で、未だ起きているのはチチカナとマルコだけ。

不思議な静寂に響くのは
ザァッという波の音と、杯に酒を注ぐトクトクという音だけだった。

「夜風は気持ちが良いものですわね」

「ああ」


潮風がふわりと髪を撫でる。
マルコはふっと隣のチチカナに視線を移した。
その時バチリと視線がぶつかったのだ。
驚いたマルコは視線を反らし立ち上がる。
しかし立ち上がった事で一気に酔いが回ったのか
フラリと足がもつれた。

「大丈夫ですか!?」

咄嗟にそれを支えたチチカナの顔さえボンヤリと二重に映る。

ああ。情けないよい。

そう思いながらも、マルコは歩くことさえ出来なかった。

「お部屋までお連れ致します」

「あ、ああ。すまないよい」


ヨタヨタともつれる足を引きずるようにして、マルコはチチカナに支えられながら停泊するモビーの自室へ向かった。

「大丈夫ですか?」

「すまなかったねい」

部屋についたマルコはベッドに座り込むと、ため息をついた。
ふわりと自分の酒臭さに眉を寄せる。

「それでは。ごゆっくりしてくださいな」

チチカナはふわりと微笑むと踵を翻した。
そんな彼女の姿が儚く映る。
先の事もあってか、何故か手放してはいけないような感覚に
マルコは陥った。

ふらつく足に力を込めて立ち上がり
部屋を出ようとする彼女の腕を掴み思いきり引く。

「どうし・・」

驚くチチカナをぎゅっと抱き込んで、そのままばたんと二人はベッド倒れ込んだ。

マルコは思った。
自分の心臓がドクドクとこんなにもうるさいものなのかと。
しかし今はそんなことはどうでもよくて、ただか細い彼女の体を離すまいと必死だった。

「どうされました?」

微かな戸惑いを含んだ声。

「なよい。」

「え、?」

「もう。どこにも行くなよい」

ただそれだけ。
ふわりとした彼女の髪に顔を埋めて
マルコが呟いた言葉だった。

「・・・すみません。ご心配をおかけして」

チチカナの腕がそっと
マルコの大きな背中に回った。
そこで彼女は、マルコが小さく震えていた事を知る。


いつのまにか、すやすやと心地よさげな寝息がチチカナの耳に入ってきた。

それはマルコが眠った事を知らせる。


しかし、困った事がひとつ。
マルコの腕はチチカナをしっかり抱き締めていてピクリとも動かない。

「あらあら。困りましたわね」



次の日の朝。
モビーからルピタの悲鳴に似た叫び声が響き渡った。

「うわぁああ!!ああああああーーーーー!!!」

「どうしたルピタ!!マルコ達いたの・・・うわぁああーーーーーーーー!!」

「どうしたエース!ルピタ!!チチカナちゃんと・・・きゃああああああーーーーー!!!」

マルコとチチカナを捜索していたルピタ達がが
マルコの部屋の扉を開いて目撃したのは
ベッドで仲良さげに眠る二人の姿。
三人の悲鳴三重奏を聞いたマルコが飛び上がる。

「なんだよい!!敵襲か!?」

「敵襲か?じゃないっすよぉおお!!!なにしてんすか!!一体何してくれたんですか!!」

「マルコ。お前とうとう・・・良かったな!!」

「良かったな!!じゃねぇえええ!!エロパイナポーーてめぇ俺のチチカナちゃんになにしやがった!!」

「よい?」

マルコが辺りを見回せば自分のベッドで眠るチチカナの姿。
そこでマルコは昨夜の事を鮮明にフラッシュバックさせる。

その後。

何もないよい!

というマルコの必死の弁明は
通ったとか
通らなかったとか。



end

あとがき
蝶華様よりリクエスト頂きました!
チチカナ氏とマルコ氏の甘!!
いかがでしたでしょうか?
ご希望に添えたかどうか・・・(。>д<)
酔っぱらうマルコ氏を書いてみたくて
こんな感じに(汗)
では!読んで頂きありがとうございました!

蝶華様リクエストありがとうございました(^^)
そして10000hitおめでとうございます♪





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