「エース隊長がこの船に来たばっかりの頃を教えてやろうか?」

ティーチさんはそう言って笑う。
エース隊長がこの船に来た頃かぁ・・・
うーん。面白そうだな!
私はティーチさんからエース隊長の昔を聞くことにした。

「エース隊長はな・・・。実はオヤジの首を取りに来た別の海賊の船長だったんだよ」

「ええ!!エース隊長ってオヤジさんの首を狙ってたんですか!?しかも船長!!?ぷぷっ。なんか意外」

「だけどオヤジにコテンパンにやられてなー。船に乗ってからも、オヤジの首を狙っては返り討ちにされて・・・。あん時のエース隊長は触るもの皆傷つけるような目をしてたぜ」

「おおお!まさにギザギザハートのエース隊長ですね!」

「ゼハハハハハ!まぁそんな感じだわな」

今のエース隊長からは想像もつかないなぁ。
私はそんなことを思いながら差し出されたココアを一口。

「そういやぁ、ティーチさんは何故隊長にならなかったんですか?古株なのに」

「ゼハハハハハ。俺にゃあそういう野心がねぇんだよ」

「またまたぁ・・・」



このティーチさん。
面白い甘党おっさんで

甘いもの大好きな私と気がよく合うんですが・・・

「ティーチさんは嘘つきですねー!そんなこと言って本当は野心丸出しなんでしょ?」

ですが、私はたまにそんなティーチさんが
怖い目をするのを知っていたりする。
それは何かを狙う、まるで私達狩人が獲物を狙う目と一緒なんだ。

冗談で言ってみたつもりのセリフにティーチさんが顔を強ばらせたのは事実だった。

「じ、冗談ですよー!さ、さ!ピーチパイ食べましょ?」

「ゼ、ゼハハハハハ。そうだな」

なんかまずい事を言ってしまったのか?
でも、ティーチさんのあの目の話は本当。
それを見てると凄く嫌な予感がするのも本当。
でも、ティーチさんはいい人だから
疑うのも嫌だった。

「ルピターーーーーー!!!!」

聞きなれた怒鳴り声。
振り向けば、エース隊長が落書きだらけの顔を鬼の形相にして食堂のドアを蹴破っていた。

「やっべ!!すんませんティーチさん!!」

どうやら昼寝しているエース隊長に日頃の恨みをたっぷり込めた落書きをしたことがバレてしまったようだ。
私はピーチパイを出来るだけくわえると、エース隊長を掻い潜り外へ逃げ出す。

「ルピタ!!てめぇ!!!まてこらぁああ!!!!」

「ぎゃあああああああ!!!!」

私はとにかく走る。
けど、エース隊長はバカみたいに足が早くてすぐに捕まった。
それから私は正座させられ、こっぴどい説教を食らったのだ。

「えへへ。すんません」

「いだだだだだ!!!もっと優しく拭けねぇのか!!!」

「最大限に優しいですよ」

私は雑巾で、エース隊長の落書きを拭いてあげる。
優しすぎるな。私。

「つか、お前これ雑巾じゃねーのか?」

「いいえ。高級タオルです。」

「高級タオルはこんなガサガサしてねぇと思うがな」


落書きを消し終わり、雑巾を絞ってる私の前に差し出された何か。
それはでっかいバケツだった。

「ん」

ぶっきらぼうなエース隊長の声。

「なんですか?このバケツ?今日からこのバケツを寝床にしろってことですか?」

「ちげぇ!!どんな発想だよ!!とにかく、食堂からでけぇ皿とスプーン持ってこい!!」

私は言われた通り食堂へ戻る。

「ゼハハハ!派手に怒られてたなぁ」

まだピーチパイ食べてるティーチさんに笑われたから、苦笑いで返す。

「あはは。やっぱりいたずらはダメですね」

私はそう言いながらデカイ皿とスプーンを取り出した。

れらを持って、デカイバケツの前に胡座をかいて座ってるエース隊長のもとへ。

「持ってきましたよーっと」

そうすればエース隊長は無言でバケツを皿の上にひっくり返した。
そしてバケツの底をドンドン。
何やってんだろ?この人。って思った。

「よし!」

エース隊長がバケツを上にあげる。
そうすれば・・・

「うぉおおおお!!!」

皿には大きなバケツの形のプリン。

「・・・この間。お前のプリン食っちまったから」

「うひゃああ!!おっきいプリンだぁあ!!・・・まさかエース隊長が作って・・・」

「いいから食え!!残したら許さねぇかんな!!」

そう言って怒鳴るエース隊長の顔は真っ赤だ。

エース隊長は
意地悪だし、女好きだし、食べながら寝ちゃうし、げんこつ痛いし、怒ると怖いし
でも、頼れる隊長で

たまに優しい隊長だ。



あとがき・・・
ティーチとの話を書いておかなきゃと思った件←
ヤミヤミの実なんか食べないで、黙ってピーチパイ食ってりゃよかったのに。
エースがバケツプリン作ってくれたら、完食します。


| ≫
back

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -