屋上へ向かう階段を登る。
俺の後ろを歩く瑠璃の顔は
ドヨンと沈んでいた。

「んー!良い天気だな!!」

俺は屋上の扉を開けると目を細めた。

「うん。そうだね」

瑠璃は風になびく髪を押さえて呟いた。
屋上の手すりにしがみつく、恨めしそうな奴らは見なかった事にして
俺はその場に腰を下ろす。

「来いよ」

「うん」

瑠璃は微笑んで、俺の隣に腰を下ろした。

彼女は弁当の包みを開ける。
俺も持ってきた弁当を開いた。

そういゃあ、この弁当・・・
あの天パーが作った弁当なんだよな・・・。

うん。
なんかすげぇ乙女な弁当だ。
一口サイズの玉子焼きに、色とりどりの野菜炒め。
ウィンナーはタコみてぇに切られてるし、オシャレにミニハンバーグまでついてやがる。
飯にかけられていたのは、多分鮭味のピンクのふりかけ。

じじぃが作る弁当は、
日本男子たるもの、日の丸弁当が基本じゃ!!
とかなんとか言って
白飯に梅干しが埋め込まれ
おかずは何故か、わさび漬けのみ。
たまに魚のみりん干しとかがそのまま乗っかってるという
雑にも程がある弁当だ。

それに比べれば、弁当らしい弁当。

まぁ、あの不気味な笑顔を浮かべながらでこれを作ったのかと思うと少々恐ろしい気もするが。

「可愛い、お弁当だね」

「え!?」

瑠璃が俺の弁当を見て、悲しげに呟く。

「それ。おじいちゃんが作ったんじゃないでしょ?」

「え、あ・・・」

「霊美さんはお料理が上手いんだね」

瑠璃が泣きそうに笑うから、俺は弁当に静かに蓋をして
彼女の細くて柔らかい体を抱き締めたんだ。

「え、エース!?」

「ばーか。疑ってんのか?」

「べ、別にそんなんじゃ・・・」

「アイツはただの居候!!それ以上はねぇよ。俺はお前だけしか見えてねぇんだ。そんな顔すんなよ」

「でも、昨日・・・霊美さんがエースの部屋に行ったって聞いて」

「アイツが勝手に入って来て、訳わかんねぇ事ほざいてただけだ。それに昨日の笑い声は・・・テレビだよ。テレビ!」

俺は生き霊の笑い声と思われるものを、テレビの声ってことにしとく。

「そっか。よかった・・・」

そんな瑠璃の体を少し離して、俺は彼女の唇に口づけた。


「ん、んん!苦しいよ!」

「わ、わりぃ!」

肩で息をする瑠璃から唇を離し、互いに見つめあう。
少し涙目の瑠璃に欲情した俺は、その白い首筋に舌を這わせた。

「っ!?エース!ダメ!学校だよ!?」

「だって我慢できねぇもん。いいじゃねぇか誰も見ちゃい・・・」

そこで俺はハッとした。
誰も見ちゃいねぇはずがねぇ。
だって手すりにしがみつく
あの世の住人と目があっているんだから。
そいつは、恨めしそうな目で俺を睨み
低い不気味な声で

ヒューヒュー。リア充爆発しろ!!

とか言ってやがる。
うるせぇ。早く成仏しろ。
俺はその場をグッと我慢すると、瑠璃を離した。

「もぉっ!学校ではしないって言ったでしょ!?エースのエッチ!!」

「わ、わりぃな。め、飯食おうか」

くっそ!!
ムカつくクソ幽霊のせいで、俺のスイートタイムが台無しだ。
その前に、この呪われた首飾りを装備した時点で
色々と台無しだ!!

俺はモシャモシャ弁当を頬張りながら、泣きそうになった。




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