うるせぇ目覚ましが俺の耳元でなってやがる。
思いまぶたを開ければ、もう朝だった。
ケータイを開けば、瑠璃からメールと着信が・・・
やべぇー。かけ直すって言っといて寝ちまった。
あいつの事だ、心配してんだろうな。
心配通り越して、怒ってたりして・・・

俺はむくりと起き上がると、制服に着替えた。
ふっと床を見れば、散らばったままの思い出。
俺は今日、これを燃やす。
ぜってぇ燃やす。
そう思い、ざっと集めてケースの中へつっこむと机の上に置いた。
そこで目に入ったのは、あの首飾り。
綺麗な赤は、俺の目に焼き付いてきやがる。
俺はそれを手にとって、首にひっかけてみた。
ちょっと短いそれ。
まぁ、珠の大きさもそれほど大きくないし・・・
シンプルだし
普通のアクセサリーとしては使えそうだ。

つけたところで、別に何が起きるわけでもなく・・・
俺は鏡の前で軽く寝癖を直すと、洗面所へ
いつものように、歯と顔を洗い
リビングへ降りる。


「エース!!おはよう!!大丈夫かぁ?」

「おぅ。寝たら良くなった。じじぃは?」

「じぃちゃんは、もう仕事いったぞ!」

ルフィはそう言ってムシャムシャとうまそうな卵焼きを頬張っている。

俺は机の上にならぶ朝食に違和感を覚えた。
いつもじじぃが作るのは、味噌汁にご飯。
それに焼き魚か納豆がくっついてる和風なメニューだ。

なのに、今日は
洋風な卵焼きに、サラダ。こんがり焼けたトーストときた。

「キシシシシ。おはようエース君」

そんな俺の耳に、あの不気味天パーの笑い声。
そうだ。昨日からあいつは家に住むことになったんだっけ。
俺は恐る恐るそっちに視線を移した。


「・・・・」

俺は自分の目を疑った。
そこにいたのは、真新しいウチの高校の制服をきたあいつなんだが・・・
雰囲気がまるで違う。
なんだ。ちゃんとすればそれなりじゃねぇか。

俺が霊美を見つめ固まっていると、その目がニヤリと笑った。
前言撤回!!
やっぱり不気味な天パーであることに変わりはないようだ。

「これ、お前が全部作ったのか?」

「そうだよ?」

霊美はそう言って笑っている。

そして、唖然とする俺の前に出された焼きたての卵焼き。

「エース!!これ食ってみろ!めちゃくちゃうめぇぞ!」

「お、おぅ」

俺は恐る恐る箸でそれをつついた。
卵焼きの中からお札とかでてきたらどうしよう。
俺はそんな事を思いながら、一口食った。

衝撃が走る。

うめぇ。
今まで食ってきた卵焼きん中で一番うめぇ。

固まる俺の耳に、霊美の押し殺すような笑い声が聞こえてくる。

ふっと視線を向ければ、どや顔で笑っていてムカついた。

それにしても、この女は一体何者だ?
料理はうめぇし、人の部屋のドア蹴破る事のできるあの脚力。
そして気味の悪い変な能力。



「わたしは幼い頃から様々な英才教育を積んできた人間だ。優秀な婿を貰うには、自分も優秀でなければならない。」

もう。何なのこの人。読心術もできんの?

俺が知りたい情報の一部を勝手に話す霊美。
それにしても、こいつの婿にはなりたくない
と、本気で思った。

朝飯を完食し、霊美が用意したと思われる弁当を詰め込んで俺たちは家を出た。

「ニシシシっ!きょうもゾロと勝負して、弁当貰うぞーーーー!!」

ルフィがそう言いながら、バンッと玄関を開ける。

俺は外に一歩出て、悲鳴を上げた。

「うぉおおおおおお!!!?」

だってそこには、あり得ない光景が広がっていたから。

「どうしたエース!!」

どうやらルフィには見えてねぇらしい。
どういう事だ!!?

口をあんぐり開ける俺をルフィが心配そうに見つめている。

その先に

多分もう人じゃない方々。

その方々が、家を取り囲むようにして佇んでいる。

だってその方々、透けてたり、足がなかったり、体なかったり
とりあえず何か変なんだ!!!

「キシシシシ。思いの外、副作用が出てしまったらしいねぇ」

霊美はクツクツ笑ってやがる。
いや。笑い事じゃねぇ!!

その方々のほとんどは女。
髪のなげぇ貞子みたいな奴もいるし、今時なギャルもいる。 着物きた時代感じる奴もいるし。
そいつらが何かこっち見ながら喋ってるのが聞こえるんだ。

『本当だ!オチヨちゃんがいった通りのイケメンだねぇ』

『素敵な殿方じゃ』

『あの結界が邪魔ね。なかったら今すぐ取り憑くのに・・・。クスクス』

ノイズがかった声。これは確かに普通の奴の声じゃねぇ!
横目でちらりと見た霊美は、俺の首もとにある首飾りを指差し

「それをつけた君は賢いよ。エース君」

って言った。

「まぁ、副作用で見えるようになってしまったみたいだが問題ない。そのうち慣れるよ」

とかなんとか、他人事のように呟く奴に殺意がわくんだけどどうしよう?

それからその女の幽霊の大軍の中に混じってる少数の男の霊が

イケメン爆発しろ。

って恨めしそうな声で言ってくんのをどうにかしてくれ。


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