バカにしたように笑うサッチとサボに
俺は限界ギリギリだ。

「てめぇら・・・今すぐ黙らねぇと、ボコすぞ?マジで」

「こえー!!」

「怒んなよエース!」

そう言って相変わらず笑う二人の肩を霊美が掴んだ。

「君たち」

「な。」

「な、なんだよ!」

サボとサッチが、その手を振り払う。

「いけないなぁ。死者の魂が眠る場所でばか騒ぎしちゃあ」

霊美の目がニヤニヤ笑っている。
サボとサッチは顔を見合わせて驚いていた。
そのはずだ。サボとサッチが昨日墓地でばか騒ぎしてたということを
こいつが知るはずないのだから。
霊美はサッチとサボを指差すと、先程俺にしたように
数を数えだす。

「いち、にぃ、さん、しぃ、ごぉ、ろく、・・・」

「な、なんだよこの女!」

「しち、はち。キシシシシ。数えきれないや」

「何いってんだよ!!」

「何って、君たちが昨日の夜ばか騒ぎした場所で眠る人たちが怒ってるんだよ。」

「え?」

「・・・」

「今すぐにでも、取り殺すってさぁ」

霊美はあの不気味な笑い声をあげながら、ジャージの両ポケットに手を突っ込む。
そして凄いスピードで、二人の額に何かを貼り付けたんだ。

ペチン!!という音が俺の耳へ入ってくる。


二人の額に貼られていたのは、得体の知れない文字のかかれた古ぼけたお札。


「キシシシシ。これで少しは軽くなったかな?・・・どうだい?肩の調子は」

霊美がそう言えば、さらさらと砂のように消える札。
これにはクラス全体が息を飲んだ。
でも秀才コンビのマルコとロビンだけは、何故か英語の教科書を熟読している。

「か、肩が軽い」

「ほ、ほんとだ。痛くねぇ」

サボとサッチはそう言って力が抜けたように席に着く。

「趣味を持つのはいいことだが、これからは気を付けたまえよ」

霊美はそんな二人を見てやっぱりニヤニヤ笑っていやがる。
そんな奴に、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。

「やぁやぁ。君はエース君というんだね?以後よろしく頼むよ」

霊美は俺の隣の席につくと、ニヤニヤした目を俺に向け握手を求めてきた。

その真っ白で細い腕は、まるで幽霊のようだ。

「あ、あぁ。よろしく」

俺は奴の目を見ず、握手せず。
それだけを呟く。




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