「ご名答だよエース君」

瞬間。霊美の真っ赤な瞳が俺を捉える。
ぞわりと悪寒が走った。


「瑠璃君は憑依されている。この学校に長年巣食っていた悪霊にね」

それを聞いた瞬間、俺の中で何かが切れた。
それと同時に脳をかけ巡ったのは
優しく微笑む瑠璃の笑顔。

「ふざけんな!!!てめぇ瑠璃に何しやがった!!」

「何?別に?ただこの子の悩みを聞いて、解決してあげただけ。それの報酬に体を貰って何が悪いの?」

「悩みだと!?」

「そう。坊や、あんたのことよ。女っ気が多いプレイボーイな坊やのこ・と。」

スラリと俺を指さして、カナエがうすら笑いを浮かべる。

「そこの霊能者と随分仲良くしてたみたいね。瑠璃ちゃん、すごく哀しそうで辛そうで。だからね瑠璃ちゃんが少なからず持ってた真っ黒で素直な部分を引き出してあげちゃった!そしたら簡単!あっという間にこの通り!」

カナエは嬉しそうに一回転して見せると、ニヤリと口角を上げた。

「邪魔者を消して欲しいって。彼氏と仲良く幸せになりたいって。だから突き落として殺した筈なのに、アンタが助けたんだよね。坊や」

「っやっぱり・・・」

俺の憶測は当たってたんだ。
あの時階段で天パーを突き落としたのは・・・。

「まぁ、元はといえばぁー・・・ぜーんぶ坊やのせい!女心に気づかない鈍感でおバカさんな坊やのせいなの。わかるかしら?フフっ、だから一緒に死んであの世で幸せになればいいじゃん。瑠璃ちゃんはそれを望んでるよ?」

カナエはそう言って俺を茶化すように笑う。
ギュッと握り締めた拳。爪が掌の皮膚を裂き
ぽたぽたと床に赤い染みを作った。

「うるせぇ!!俺の女はそんなこと望むような奴じゃねぇんだよ!!!」

そう言って踏み出そうとする俺を止めたのは
霊美のやけに白い腕だった。

「まぁまぁ。落ち着きたまえよ。今ここで君が暴れても瑠璃君の体を傷つけるだけだからね」

「くそっ!!どうしろってんだよ!!おい!天パーなんとか・・・」

そこで俺は口を噤んだ。
何故ならあのいつも眠そうな瞳が
ギラギラと光を映し
それは別人のように鋭かったからだ。



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