「てめぇ!!!」

「っゴホッゴホッ!!・・霊美」

瑠璃は額を抑え、俺から飛び退いた。
そのドスの効いた声、そして霊美を睨む鋭い眼光はもう俺の知ってる瑠璃ではなかった。

「キシシシ。これだけの霊気を持つ悪霊が傍にいたなんて、気づかなかったのはわたしの失態だ」

「あ、悪霊!?」

俺は起き上がりハッとして瑠璃を見た。
その顔は歪んだように笑っていて
悪寒が走る。
そして周りを飛ぶような黒い何か。
それが俺にははっきりと見えていた。

「アンタ。あんとき殺したつもりだったのに・・・。ふふっまぁいいや」

瑠璃はそう言ってらりとた立ち上がる。
その瞬間床にカンカンという音と共に何かが落ちた。
それはさっき弾けた呪われた首飾りの一珠だった。

「エース君。君はモノを大事に出来ないのかね?」

霊美はニヤニヤしながら片手にもった赤い珠達をジャラジャラと鳴らしてみせる。

「わ、わりぃ」

いや。俺が壊したわけじゃないけど。
なんだか謝ってしまった。

「まぁ。そんなことはどうでもいい。それにしても驚きだ。こんな完璧な亜空間を作り出せる程霊力を蓄えた悪霊なんて。何年ぶりだろうなぁ」

ニヤニヤとした笑みを絶やさずに、霊美が未だ立てずにいる俺を通り越していく。
そして瑠璃と俺の間に入ってピタリと止まった。

「何人喰った?」

霊美は確かにそう言った。
喰った?え?喰ったって何を・・・

すると瑠璃がブルブルと肩を震わせ、次の瞬間狂ったように笑い出したのだ。

「ギャハハ!!!何人喰っただって!!?フフっ、そりゃあ数え切れない程だよ!!」

「瑠璃・・・」

「あのさぁ。その瑠璃って名前やめてよー。あたしはカナエ。あ、でもぉ。この子の体貰ったら瑠璃になるのかぁ・・・。まぁ悪くない名前だけど、あたしは好きじゃない」

何を言っているのかわからない。
それが正直な感想だ。
でも、そんな混んがらがった脳の中で1つ思い出した事がある。
それは、カナエ。という名前だ。
確か、瑠璃が前に話したことのあるこの学校の先輩だったはずだ。

「ふむ。そうか。君の生前の名はカナエというのか。」

「そう。カナエ。でも、この10年色んな名前を名乗ってきた。食い殺した数だけねぇ!!!」

まさか。今。
瑠璃は、このカナエとか言う奴に?


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