夕焼けが差し込むリビングに鳴り響いたケータイの着信音。
サブディスプレイを見れば
瑠璃の文字。
この相手からの電話が待ち遠しかったはずなのに、何故だかヒヤリとしたものを感じる。

「もしもし?」

『あ。エース?私。瑠璃!』

電話の向こうの彼女はいつも通り。
俺はほっとしながらも話を続けた。

「ど、どうした?」

『え?どうしたって・・・。気持ちの整理がついたから。やっぱり気づいたのエースじゃなきゃダメだって。おかしいかな?こんな短い期間でもエースがいないって思ったら』

瑠璃はそこで言葉を詰まらすと、しゃくり上げる。

「泣くなよ」

『だってぇ』

「俺も気づいた。やっぱ瑠璃と片時も離れたくねぇ」

『ありがと・・・ねぇ。エース。会いたいよ』


俺は家を出た。
真っ赤な夕焼けに混じる夜の群青が
綺麗なグラデーションを作ってる。
異様に雲が多い気がして空を見上げた。

「雨でもふんのか?」

瑠璃は学校にいると言っていた。
なんでもこの時間まで課題をやっていたんだと。
真面目で、素直で、可愛い。
俺の彼女。

やっぱりアレは瑠璃なんかじゃあなかったんだ。
俺はそう確信して学校までの道を急いだ。
でも何かおかしい。

学校までの道のりに人っこ一人居やしねぇ。

この時間なら、帰宅途中のサラリーマンや学生。
買い物帰りのママチャリに乗った主婦
とにかく人が居たっておかしくねぇのに。

さっきまで綺麗なグラデーションだと思ってた
赤と青の空さえ気味が悪くなってきた。

学校についてその異様さを改めて実感した。
何故なら部活中の学生の姿もなければ、職員室の明かりすらついちゃいねぇ。

これは一体。

ゴクリと生唾を飲み込んで、俺は一歩を踏み出した。

瑠璃は教室にいた。
ポツンと椅子に座りただ一点を見つめていて
俺が名を呼べば
ゆっくりこちらを振り向いてニコっと笑った。

「会いたかったよ!エース」

そう言って立ち上がると俺に近寄って抱きつこうとした。
だから俺も両手を広げれば
瑠璃の足がピタリと止まったんだ。

「・・・ねぇ。エース。何よその首飾り」

「え?ああ・・・ほら言ったろ?知り合いに貰ったって・・」

「へぇ。そうだっけ?でもさ」

瑠璃はそう言って今まで見たことのないような目で俺を睨んできたんだ。
それと同時にあの首飾りが一瞬ぶるりと震えて

「あたし。それ。嫌い」

アレだけ引っ張っても、何しても取れなかった首飾りが弾けた。
バラバラと床に散らばる赤い珠。
そして動かなくなる

俺の体。


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