「知らなくて良いこともある。わたしはそう言ったはずだよ?君にだって知られたくない事はあるだろうに」

天パーはそう言って小さくため息をついた。
ピリピリとおにぎりの包装をあける音がやけに耳に障る。
見えなくていいものまで、見えてしまう。
それは、俺の過去も見えてるってことなんだろう?

「見えるのか?」

「何がだい?」

「・・・俺の過去」

「ああ。見えるさ。悪いが意図的ではないから恨まないでおくれよ」

天パーはそう言っておにぎりにかぶりついた。
しばらくの沈黙の後、俺は口を開く。

「じじぃも、ルフィも。俺と血が繋がってねぇ。気づいたら親父は犯罪者として死刑になってて。母親は俺を産んで死んだし。昔から孤児院をたらい回しにされてきた。ひそひそ噂されるんだ。犯罪者の息子だって。別に家族なんていらねぇし、一人で生きてくって思ってたのに・・・じじぃが俺の前に現れやがったんだ。」

「ほぅ。ガープさんがねぇ」

「笑っちまったさ。いきなり現れて家族になるんじゃって・・・どう考えても頭のおかしいおっさんだって思った。」

「キシシシ。ガープさんは元々そういう人柄なんだねぇ」

俺の話に天パーは愉快そうに笑う。

「お前は何も思わねぇのか?俺は犯罪者の息子なんだぜ?」

「別に?だって君が罪を犯したわけじゃないんだ。たまたまそういう星の元に産まれただけの事さ」

たまたま、か。
さらりとした返答の中に
得体の知れない深みすらあった。
そりゃそうなのかもしれない。
こいつは平安時代からいろんなもんを見てきたんだろうからな。
この時俺は初めてこの天パーすげぇって思った。

この際だから、さっきのガキの事も含め
いろいろ聞いてやろうと思ったんだ。

「あのよ」

「なんだい?今日はやたらと話が多いね」

「さっきのガキとは・・・お前の知り合いか?」

「ああ。奴のことか」

霊美はそう言ってまた不気味な笑みを浮かべ
何個目かわからないおにぎりに手を伸ばした。

「知り合いって程でもない。むしろ関わりたくない奴ナンバーワンなんだけどねぇ」

「は?まさかストーカーなのか!?」

「まぁそんなところだろうね。」

モシャモシャとおにぎりを頬張りながら天パーは相変わらずの笑みを浮かべていた。
ゴクンとおにぎりを飲み干して、コーラをラッパ飲みすると
大きなげっぷを1つ。

「奴の名は麻倉葉王。まぁ転生仲間ってところだろうか。遥か昔、初代の頃からの顔見知りさ。」

「は?ちょ、ちょっと待てよ。話が全然見えねぇ!」

「だから、奴も転生を繰り返すシャーマン一族の長ってことさ。 」

俺に分かったことは1つ。
シャーマンとは得体の知れない化け物集団ということだけだ。
俺が呆気に取られていると、天パーはクツクツと喉を鳴らして笑う。

「わたしたち月野辺以外にも、古くからシャーマンの名門があってね麻倉家はその1つさ。ただその長である葉王はちょっとばかし変わった奴で、その力で人間を滅ぼすとかなんとか言ってたっけ」

壮大な話についていけず
ぶっちゃけ聞かなきゃ良かったと思ったが
聞いてしまった手前、耳を傾け
理解しようと俺は必死になった。

「転生すればその先に奴がいつもいたなぁ。そしていつもわたしに突っかかってくる。現代に産まれたわたしの前に現れた時奴はわたしの生家を火の海にしていた」

「火の海?」

「ああ。わたしの子孫でもあり、わたしの母と祖母である二人は既に奴の力で灰になっていた。燃える生家を目の前にし、その時はわけもわからずただ奴と対峙した」

「・・・」

俺ははっとした。
いつぞやかあいつの部屋で見た焼け焦げた写真と、位牌。
それってもしかして・・・

「わりぃ。変なこと聞いちまって」

「いや。いいんだ。奴はどうしても月野辺の秘術が欲しいらしくてね。いやはや参った奴だ。なんとか奴から逃げ各地を点々としている途中ガープさんに出会ったというわけさ」

なんだかあっさりとした返答だと、違和感を持った。
自分の・・・母親と祖母を目の前で殺されたんだぞ?
なんでそんなにあっけらかんとしていられるんだろうか?


「何故わたしがそんなにあっけらかんとしていられるか。知りたいんだろ?」

「え?あ、まぁ。だって憎くねぇのか?自分の身内が殺されたんだぞ?」

「そりゃあ憎いさ。憎くて憎くて殺してやろうと思った。しかし月野辺の人間は常に死を覚悟しているからね。それほど多くの輩がわたしたちの秘術を狙っているってことさ。それに」

「それに?」

「憎しみにかられらば、飲み込まれ鬼になってしまう。鬼になったものは手当たり次第の人間を襲い、魂を食らいつくす。理性の欠片もない化け物に成り果てるんだ」

そうはなりたくないだろう?

そう言って笑う天パーは
テーブルの上に散乱したおにぎりの包装の残骸を片付け始める。

「わたしが出来る弔いは、秘術を守る事。そしてわたしの代を持って月野辺を終わりにすることだ。奴にここを嗅ぎ付かれた以上長居は出来ない。アイツは頭のネジが100本ほど抜けているから何するか分かったもんじゃない。君やルフィ君ガープさん・・・皆を巻き込むわけにはいかないんでね」

天パーはニヤニヤと笑いながらゴミをまとめゴミ箱に捨てると
すたすたとリビングを後にした。
一人きりになったリビングで
俺はたった数十分で語られた壮大な話を
整理する。
しかし、こうも非現実的な話を
理解することは到底出来なかった。

分かったのは
天パーの力は"本物"だ
ということと
アイツは狙われていて
他に被害が及ばないようここを離れるということだ。

それにしてもあのガキんちょに
そんな力があるんだろうか?
確かに得体の知れない雰囲気は醸し出していたが

まぁシャーマンというのは
化け物だと俺の中で確定したので
きっとあのガキんちょもそれなりの力を秘めているんだろう。


つまらない夕方のワイドショーをぼんやりと眺めながらそんなことを思った。

その時だ
俺のケータイが鳴ったのは。


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あとがき
やってしまいました(笑)
我らがプリンセスハオ様です(笑)
微妙な混合もどきになってしまいましたが、ゲストということでm(__)m
では読んで頂きありがとうございました!



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