学校に救急車のサイレンが鳴り響いたのはそれからすぐのこと。
俺達はその後の時間を職員室で事情聴取をされて過ごしたんだ。
解放されたのは、放課後になってからだった。

「はぁ。大丈夫かな」

「まぁ、保険医のツルさんは問題ねぇって言ってたけどよ」

「それにしても誰が霊美を・・・」

サッチとサボがブツブツ言うなか、俺は考えていた。
あの笑い声に、聞き覚えがあったからだ。

『ふふっ。エースっておもしろいね!』

そう言って優しく笑う
瑠璃の笑い声に似ていたんだ。

まさか、そんな。
瑠璃がそんなことをするはずがねぇ。
そう思いながら、余計な憶測をするのを止める。

そんなことを思っていたら、誰かとドンと肩がぶつかった。

「うぉ!」

「あら」

それはロビンで彼女が持っていた資料がバラバラと床に落ちる。
俺は急いで落ちた資料を拾い上げた。

「おいおい!エース!」

サッチとサボも落ちた資料を拾い上げ、ロビンに渡す。
俺は拾い上げる資料の中に、ふっと目についたものがあったんだ。
それには月野辺一族についてのものがあったんだ。
確か前に、調べるとかって言ってたな・・・。
それをロビンに渡し、俺は彼女に視線を移す。

「悪かったなロビン!おーい。エース行くぞー」

「わりぃ。ちょっと先に行っててくれ」

俺を呼ぶサッチとサボに断りを入れて、俺はロビンに再び視線を戻した。

「月野辺さん。大丈夫だったの?」

「あ、ああ。命に別状はねぇって」

「そう。ならよかったわ。なんだか怖いわね」

「あ、ああ。・・・あのよ」

「何かしら?」

「お前が持ってる資料・・・わりぃ。拾うとき見ちまったんだけどよ。月野辺一族がうんたらって」

俺がしどろもどろに質問すれば、ロビンはああ。と短く返事を返した。

「私なりに調べて見たのよ。けど、分かったことは少なかったわ」

「そ、そうなのか?」

「ええ。月野辺一族は平安時代から続くシャーマンの家系だってことくらいね」

「シャーマン?」

シャーマンという聞きなれない言葉に、俺はそのまま聞き返した。

「シャーマンというのは、所謂霊的な能力を行使したり、その者の力を借りた術を行使する人達の事ね。その力で国の未来や重人の未来を占ったりして、政治に深く関わってきたってところまでは調べられたわ」

「へぇ」

成る程。
あいつの家は一族みんなそんな力があるって訳か。
それならあの気味の悪い能力にも納得がいった。

ロビンに礼をして、廊下を歩く。




俺は一人で帰路を歩む。
なんだか最高についてない一日だったなんて
呑気な事を思った。
そんなとき、道端で井戸端会議する主婦達に視線がいった。
その中にいたのは、写真でしか見たことのない瑠璃の母親。
瑠璃はとっても母親っ子で、よく写真を見せて話をしてくれたっけ。

母親なら、何か分かるかも知れない。
俺の足は自然とその主婦達の元へ向かった。

「あ、あの」

俺がおずおずと声をかければ、一斉に主婦達が俺に視線を移す。

「あ、あの瑠璃さんのお母さんですよね?」

そう言えば母親は一瞬驚いたような顔をして、ペコリと頭を下げる。

「そうですが。あなたは?」

そう言われて一瞬戸惑ったが

「俺、瑠璃さんとお付きあいさせて頂いてるポートガス・D ・エースと申します!」

ってこの際ハッキリ言ってみた。

「え、あ。どうも。娘がいつもお世話になってます」

「あ、あの。娘さん・・・最近どうですか?」

「は?」

「え、あ。あの変わった様子とかありませんか?」

すると母親は怪訝そうに眉を寄せる。

「別に、特に変わった様子はないですよ?昨日もいつも通りに塾に行ったし、今日だって普通に学校に・・・」

「そう、ですか」

そうか。じゃあ昨夜見た瑠璃は
人違いだったのか?
俺は母親に一礼してその場を去った。

「ちょっと間城さん。あの子・・・」

「え?」

「知らないの?ガープさんところにいるって」

「結構前に話したじゃない!ほらワケアリの!」

「悪いことは言わないわ。あの子はやめた方がいいって瑠璃ちゃんに言った方がいいわよ」


去り際に、そんな会話が聞こえた。
一瞬、胃がせりあがるような感覚に足を止めたが
そんなのは今に始まった事じゃないと
自分に言い聞かせ、家路を急いだ。





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