なんだか最高に家に居たくなくなった。
リビングに降りるにつれて
誰かの泣き声が聞こえる。

「っひっぐ、なんでだよぉ!じぃちゃん!!」

それはルフィの泣き声だ。
普段、じじぃに怒られても泣かないルフィ。
それが泣いているんだ。

余程の事があったのだろう。

「どうした!?ルフィ!」

「っひぐっ、エースゥ」

そこには神妙な顔つきのじじぃと、
鼻水と涙を垂れ流しにしたルフィが居た。

「な、なんだよ。何かあったのか!?」

「うっ、う・・・」

ルフィはしゃくりあげるだけで何も言わない。
代わりにじじぃが口を開いたんだ。

「エース。霊美の事なんじゃが」

じじぃが言ったのは
あと一週間でアイツがこの家を出るということだった。
なんでも、アテが見つかったらしく
そっちに行くんだと。
ああ。さっきの天パーの言葉の意味が理解できた瞬間だ。

ルフィは嫌だ、嫌だ。と泣き続けるばかり。
確かにルフィはアイツになついていたからな。

なんだか俺の中で虚しい何かが突き抜けるように通っていった。

「わりぃ。ちょっと出かけてくる」

「エース!どこいくんじゃ!」

俺は家を飛び出した。

夜道を歩きながら考える。
別にいいじゃないか。
アイツが原因で俺と瑠璃は距離を置くところまでいってしまったんだ。
そう考えれば好都合だ。
これで瑠璃の不安は解消されるわけだし。
気味の悪い心霊事ともおさらばできる。

俺にとって良いことずくめの事ばかりなハズなのに。
このモヤモヤが拭いきれない。

そんなときサッチから着信。
電話に出れば賑やかな雑音と共に陽気なサッチの声が聞こえた。

『おーぅ!エース!今ひまかー!?』

「あーまぁな。どした?」

『実はよー今サボと、サヤコちゃんと一緒にカラオケにいんだよ!』

髪の毛弁当の当事者とカラオケかよ。
まぁ話を聞く限り、うまくいってるみてぇだな。
俺はそこへ合流することにした。


サッチ達と合流すれば
サッチとあの吉田って子は
さっきまでの髪の毛事件なんか
なかったかのように仲良くなってやがるし。
サボは一人でモー娘メドレー熱唱してるし。

なんだかなぁ。
どこにいても楽しいと思えねぇ。

せっかく合流したカラオケも途中で抜けた。
なんだかなぁ。
やっぱこういう日は大人しく寝ろって事なのだろうか?
しかしさっきうたた寝してしまったせいで
全く眠くねぇ。
繁華街のネオンを体に浴びながら、俺はフラフラなにするわけでもなく
歩き続ける。

「やーだぁ!マジで言ってる?」

「マジマジ!いーっしょ?」

聞き覚えのある声に、視線を上げた。
下品そうな男と腕を組んで歩く
それは紛れもない瑠璃の姿だった。
俺の足が止まる。
体の芯から震える。

瑠璃は普段しないような化粧を施して
見知らぬ男と楽しそうに歩いてたんだ。
なんで、どうして。

あの声、笑った顔。
間違いなく瑠璃だった。

声をかけたくても、うまく声にならない。
その間にも男と瑠璃は裏路地に消えていった。

「っ瑠璃!!」

追いかける。
しかし、裏路地に入っていった二人は最早居なかった。
そこは有名なホテル通り。
ギラギラと光るホテルの看板がいくつも立ち並ぶ。
二人がどこにいったのかは明白だった。

流れ行く人ごみに取り残され、ぽつんと立ち尽くす俺は


しばらくそこから動けなかった。


next→




戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -