あれからカナエさんが言ったことが
頭から離れない。

『消えちゃえばいいって思ってるでしょ?』

それは悪魔の囁きのように
私の脳にこびりついて離れないんだ。
エースと一緒にいても、誰といても
考えるのはその事で
私の心はどんどんと深みにはまっていくみたい。


「・・・?ねぇ、瑠璃?」

「え、あ?何の話だっけ!?」

「ったくもう!どうしたのよ!」

そこにあったのは
膨れっ面のナミ。

「ごめん。」

「またエース先輩?」

「う、うん。そんなとこかな?」

「ったく!あの先輩もチャラチャラしてて信用ならないわね!」

「エ、エースは、エースはそんなことないよ・・・」

「でも現にあんたがこんなにも憔悴してるじゃないの!あの霊美って先輩との仲そんなに良いわけ?」

「う、うん。」


エースと霊美さんの事もそうだけど・・・
何より自分に憔悴しきってる。
あの日以来、私が私じゃなくなるようで
怖いんだ。
でもナミに言えないよ。
そんな子って思われたら嫌われちゃうかもしれない。


昼休み。
いつものようにエースが来てくれた。
屋上で御飯を食べるのが日課。
だけど今日はなんか食欲もない。
エースは今朝サッチ先輩がラブレターを貰った話をしていた。
けど、その話すら頭にはいって来ない。

最近ずっとこんな調子の私に
エースは心配してくれたけど
一度だけ。
私が大丈夫だよっていったら
そっかぁ。
だって・・・。
べつに心配してほしくて、こんな態度とってる訳じゃないけど
もっと心配してくれてもって思っちゃう。
私っていつからこんなワガママになったんだろう。

そんな事を思ってたらエースと一緒に居たくなくなって
サッチ先輩とはしゃぐエースを置いて、屋上から去った。


私はある決意をした。
カナエさんに会いにいこう。
屋上から向かったのは二年生のフロアだ。
恐い先輩が沢山いる二年生のフロアには滅多に足を踏み入れない。
けど、カナエさんに会って話さなきゃって!
なんだかそんな気がした。

「一年?」

「一年が何のようだよ?」

「あの子知ってるー。あのエース先輩の彼女だよ!」

「まじかよ!手ぇ出したら殺されんじゃん!」

そんな会話が聞こえてきた。
じろじろと突き刺さる視線を掻い潜り、私は必死でカナエさんを探す。
けど、あることに気づいた。
カナエさんのクラス聞いてない!!
これじゃあ探しようがないよぉ。

「あれ?」

諦めかけた私に声をかけてきたのは

「ロー先輩!キッド先輩!」

ロー先輩とキッド先輩だった。
この二人はエースと仲が良くて
それを通じて私も顔見知りになった。

「どうした?」

「んだぁ?今日はエースの野郎一緒じゃねぇのか」

この二人なら顔広いし
カナエさんの事知ってるかも。
そう思った私は二人にカナエさんの事をたずねたんだ。

「あの、二年生で柊カナエさんって人知ってますか?」

しかし、二人の反応は意外なものだった。

「柊カナエ?おいロー。てめぇ知ってるか?」

「悪いが知らないな。まず二年生に柊という名字は居ない」

「え?」

居ない?
どういうこと?
だってカナエさんは二年生だって言ってたし・・・。
それに、この学校の制服も着てた。

そこでチャイムがなったんだ。
どきりとして、逃げるように二年生のフロアを後にした。

じゃあ私が会ったカナエさんって、一体誰なの?


「あ!お帰り瑠璃」

「あ、ナミ」

教室に戻ればナミが笑顔で出迎えてくれた。

「さっきねエース先輩が来てたよ」

「え?エースが?」

「ええ。瑠璃の事探してたみたいだから、ガツンと言ってやったわ!瑠璃を泣かしたら承知しませんからって!」

「ナミ・・・。ありがと」

午後の授業は何にも頭に入ってこなかった。
エース、霊美さん、カナエさん。
このことばかりが頭を巡る。

一番はカナエさんの事だけど
こればかりは考えたってどうしようもない。
もしかしたらロー先輩やキッド先輩が知らなかったって可能性もあるわけだし・・・。

そんなこんなしていたらもう放課後になっていた。

「おい瑠璃ー!」

「あ、ルフィ」

「今日ウソップん家でゲームやるからよ先帰るってエースに言っといてくれ!」

「う、うん。わかった。」

クラスからどんどん人が居なくなってく。
いつもすぐに迎えに来てくれたエースが
今日は来ない。
もしかして昼の事怒ってるかなぁ?
しょうがないよね。私が悪い。

そんなことをボンヤリ考えてたら
エースが息を切らしてやって来た。

「わりぃ!瑠璃!」

「エース。あ、昼はごめんね?」

「あ、ああ!大丈夫だ!・・・」

そこから沈黙。
まるでそれを消したいかのように
エースが話始めた。
それはサッチ先輩の事。
あのラブレターの件の続き話だった。
私はそれをうん、うん。と聞く。

その時だった。

「んであの天パーがよ!」

それと同時にエースが
ヤバイって顔した。
その表情に、私はイラついてしまったんだ。
なんでそんな顔するの?
霊美さんと何もないなら
別にいいじゃない。
私に言えない何かがあるから
そんな顔するの?

私の心が真っ黒く染まった瞬間だった。

「また、霊美さんの話だね」


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