「あ、あのぉ」

廊下に向かった俺達は、一年生の注目の的だ。
ナミは俺から目を離さず、腕を組んだまま
かなり怒ったご様子だ。

「お、俺なんかしたか?」

「ええ。しました」

「えーと・・・。」

「瑠璃の事。どうお考えで?」

瑠璃の名前に俺はハッとした。
このナミという子は何か知ってるんじゃないかって・・・。
おれが口ごもれば、ナミははぁって深いため息をついた。


「エース先輩。あの子はかなり不安なんですよ?」

「不安?」

「あの霊美とかいう先輩とかなり仲良いみたいですけど」

ん?なんであのくされ天パーが出てくるんだよ!!

「ちょ、ちょっと待て。なんであの天パーが出てくんだよ」

「なんでって。・・・はぁっ。本当鈍感なんですね。瑠璃はその霊美先輩とエース先輩の仲を不安に思ってるってことですよ!!」

俺とあの天パーが?
天と地がひっくり返ったってあり得ない事態だ。
もし仮にそうなったとしたら
その時はこの世の終わりだ。

「とにかく、」

ナミがそう言いかけた時。チャイムが鳴る。

「あ、とにかく!!あの子を泣かせたら許しませんからね!!!」

ナミはそう言って俺をギロリと睨むと、去っていった。
俺は頭をワシワシと掻くと踵を翻す。


教室に戻れば、サッチが弁当箱を見てニヤニヤしていた。
すげぇキモい。
その時ふっとあの天パーと目が合ったんだ。
何故かいらっとした。
アイツのせいで俺は瑠璃と微妙な感じになってるんだ。

「やぁやぁエース君。サッチ君は何故あんなにニヤニヤ?」

「知らねぇ」

「おやおや。大分ご立腹の様子だが、何かあったのかい?」

「なんでもねぇ。」

くっそ。てめぇのせいだっつーの!!
そんな思いを込めて霊美を見れば
ヤツはニヤニヤ笑うだけだった。

午後の授業中。
思うのは瑠璃の事ばかり。
元気がなかったのはそのせいなのか?
俺は天パーとも何もないし。
勿論瑠璃と付き合ってから、他の女なんか眼中にもはいらねぇ。

なのに、瑠璃は不安がってる。

あー!!どうしたらいいんだよ!!

考えれば考えるほど深みにハマって
気づけば放課後になっていた。

「うへへ。エース君。どうしたんだー?そんな怖い顔してぇ。」

サッチのムカつくまでのにやけ顔が目の前に広がった。
一発殴ってやりたかったが、グッと我慢してやる。

「んでもねぇよ。」

「おいサッチ。あの子とはどうだったんだよ!」

そんな俺の横でサボはサッチとあの吉田って子の事が気になって仕方ない様子だ。

「え?聞きたい?」

「聞きたい!聞きたい!な?エース?」

「・・・」

「んじゃ教えてあげよーう!」

そこでサッチはベラベラと喋り出した。
なんでも、手作りの弁当を貰ったらしい。
そしてウサギのぬいぐるみストラップも一緒に入ってたんだと。

「んでね?このうさちゃんストラップ!こっちも手作りなんだってさぁ!なんか一週間身につければ良いことあるって言ってた!」

「へぇ!良くできてんじゃねぇか!な?エース」

「・・・」

サボがいちいち俺に話を振ってくる。
止めてくれ。
俺が席を立とうとしたとき
あることに気づいたんだ。
そう。それは隣の天パーが居ること。
放課後になりゃ誰より先に帰るヤツが
今日に限って残ってやがる。
しかも何をする訳じゃなく、何かを見てニヤニヤしていた。
その視線の先。
そこにはサッチが持つあの手作りストラップ。

猛烈に嫌な予感がした。

「それじゃ俺達も帰るかなぁ」

「おぅ。んじゃな!エース!霊美!」


そう言って俺達の間をすり抜けようとするサッチとサボ。
そんなサッチの腕を、霊美がグッと掴んだんだ。

「うぉっ!!なんだよ霊美!さては、俺がラブレター貰ったことにヤキモチか!!」

「キシシシシ。違うよサッチ君。君が貰ったそのウサギ。ちょっと見せてくれないか?」

「え?あ、ああ!良いぜ!」

サッチはそのストラップを天パーに差し出す。
するとヤツはそれを奪うように取り上げ、机に押さえつけたんだ。
そして机の中からカッターナイフを取り出すと
チキチキと刃を出した。


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