サボは、例の出会いアプリで今日知り合った女の子と会うんだぁ。
と鼻の下を伸ばして呟いた。
くだらねぇなぁ。
と思いつつも、この辺で夜景が綺麗な場所や
有名なデートスポットを教えてやれば
すっ飛んで帰っていった。


「へぇ。出会い系のアプリかぁ」

「そーなんだよ。サボの奴、鼻の下伸ばして帰ってたぞ」

「ニシシっ俺は食いもんがうまい所教えてくれるアプリのほーがいいけどなぁ」

帰り道、ルフィと瑠璃にその話をした。

「でも、出会い系って怖いよね?だってメールだけのやり取りの人と会うって事でしょ?私は無理だなぁ・・・」

瑠璃はそう言って眉を寄せる。

「でも、ちょっと楽しそうだなー!友達が増えるだろ!?」

ルフィはあまり出会い系というものがわかってないらしい。

昔、ケータイを初めて手にしたころ。
俺も出会い系で引っかけた女と
色々あったが、あんまりいいものじゃあなかったっけ。
そんなことを思い出しつつ、ルフィに
出会い系なんてやるもんじゃねぇ
って言えば
瑠璃の怪訝そうな目が痛かった。


瑠璃が塾の為、早めに家に送り届けた後
ルフィと共に家へ帰れば
やっぱり天パーがおにぎり食ってた。
おにぎり食いながら、ピコピコと
マリカーやってる。

「やぁやぁ。お帰り」

「霊美ーーー!俺にもおにぎり!昆布がいい!」

ルフィは笑顔で鞄を放り投げると、霊美が座るソファーへ向かい
昆布のおにぎり食い出した。
最近慣れたこの光景。
俺はため息をつきつつも、冷蔵庫から飲み物を取って
自分の部屋へ向かおうとする。

「エース君」

「あ?」

そんな俺を呼び止める、天パーの声。

「サボ君の事だが・・・」

「んだよ?サボがどうした?」

「キシシシ。いやぁね。わたしの思い過ごしかもしれないが、気を付けたほうがいい」

「はぁ?」

俺は訳がわからず、黙々とマリカーやってる天パーの姿を横目で見た。
けど、奴はそれ以上は語らず・・・。
なんだよ。と思いながら俺は部屋へ向かったのだ。

部屋に入って制服からラフな格好へ着替える。
飲み物を口に含み、テレビをつけてベッドへダイブ。
夕方のニュースをぼんやり眺めながら
さっき霊美が言ってた事を思い浮かべる。
なんだかサボが心配になってきて、電話をかけてみることにした。

『もしも〜し!』

しばらくすればサボの陽気な声。
周りはガヤガヤとうるさい。
多分街中にいるのだろう。

「サボ!大丈夫か?」

『はぁ?なにがだよー!俺はデートを楽しんでるから大丈夫だ!』

「なら、いいけ・・・」

そう言いかけた俺の耳に、サボの声とは別に
誰かの声が聞こえる。
さらにはべらべらと自慢話をするサボの声までが、ザーザーとノイズが混じったような音声へと変わっていくのだ。

サボとは違う、ひくい低い女の声。
それはまるで口を通話口にぴったりくっつけて
喋っているようだ。
何語なのかわからない、意味不明な言葉をボソボソと呟いては
その後にふふっと気味の悪い含み笑い。

俺は背筋がぞおっとした。

「おいサボ!!」

俺が叫んだのと同時に、電話が切れる。

ツーツーという通話終了音が虚しく鳴り響く。
俺はしばらく唖然としたあと
すぐに電話をかけ直した。

しかし、

お掛けになった電話は電源が・・・

繋がらない。



何度かかけてみるが、一向に繋がらない電話。
何度目かわからないリダイヤルの後
やっと繋がったのだ。

「おい!サボ!!」

『うっわ!なんだよエース!声がでけぇ!』

相変わらずガヤガヤとうるさい周りの音。
ノイズがかったサボの声はいつものサボの声に戻っていた。
そしてあの気味の悪い女の声もしない。

『電話かけてきたと思えば、勝手に切りやがって!』

サボはそう言いながら、若干機嫌が悪い。
なんだ?俺が叫んだの勝手に切った事になってんのか?
まぁ、電話が再び繋がった事に安堵し
俺はほっと胸を撫で下ろす。

「わ、わりぃな。何か変な事ねぇか?大丈夫か?」

「なに言ってんだよエース!お前が大丈夫か?まぁいいや。俺忙しいからよ!また明日学校でな!」

プツリと切れる電話。

まぁ、サボも普通そうだし・・・
さっきのは、
ケータイの不具合だろ。

俺はそう思って、ケータイを机の上へ置くと
再びテレビへ視線を移す。




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