「それでね?・・・って聞いてる?」

「あ、おぅ。聞いてるぜ!ナミちゃんがこの間なめこ栽培のグッズくれたって話だろ?」

「違う!!その話は終わったよ!」

「・・・わ、わりぃ」


瑠璃の買い物を一通り終えた後、彼女オススメのカフェで一息ついていた。
さっきから気になってるのは


寅次郎は見つかったのか?
生きているのか?
それとも・・・。

そればかりが頭を巡る。
なんでこんなにも気になってしまうのかが
自分でも不思議だ。


「今日のエース変。もういい。私帰る!」

「え!?あ、待てよ!」

「もういいよ!家かえってゆっくり考え事したら?私も宿題あるし!じゃあね!!」

瑠璃はそう言ってお金をダンと叩きつけると去っていった。

ばか。
俺のばか。

急いで会計を済ませ外に出たけれど
瑠璃の姿は何処にもない。

彼女が置いていった560円が、俺の手のひらで空しく光る。

「・・・はぁ」

それをポケットにしまい、俺は瑠璃に電話をかける。

出やしねぇ。
かなり怒らせちまったようだ。

何回か電話してると、ついには

お掛けになった電話は電波の・・・

お馴染みのアナウンス。
電源切りやがったな・・・。


俺は仕方なく踵を翻す。

そうだ。図書館にあいつらまだいるのかな?

俺の足は自然に図書館へと向かう。




「いねぇか。」

図書館にあいつらの姿はなかった。
しゃあねぇ。このまま家に戻るのもなんだし、サッチとサボに連絡でも・・・
と思ったとき
俺の肩が叩かれた。

「やぁやぁ。何してるんだい?」

振り向けば天パー。
と紫乃。

「あ、えっと」

「デートじゃなかったのかい?」

霊美はニヤニヤしながら俺を見上げてくる。
怒らせたなんて言ったら、バカにされると思った俺は

「あ、あれだ!瑠璃に用事が出来ちまってよ!!」

と嘘ついた。

霊美の目がニヤリと笑う。
こいつ、分かってやがる。
と思った瞬間だった。

「そうかい。残念だねエース君」

「お、おう!残念過ぎる!!」

「・・・寅次郎さんの所在が分かったよ。今から一回家に戻って向かう所だ。君はどうする?一緒に行くかい?」

ニヤニヤ笑う霊美に、一瞬言葉を詰まらす。

「・・・っ行くよ!俺も行く!」

「ならついてきたまえよ」

霊美はくるりと踵を翻し、スタスタ歩き出す。

「よ、よく所在が分かったな」

「ああ。運が良かったよ。寅次郎さん・・・本名佐々木寅次郎は、この辺では有名な金持ちだったらしくてね。」

「佐々木?聞いたことねぇぞ」

「大分前にここから離れ、地方にある別荘に住居を移したようだよ?あの図書館建設時も、資金を出していたみたいで・・・。運よく館長に話を聞けて良かったよ。まぁもしかしたら紫乃さんの思いが起こした奇跡かもしれないね」

霊美はスラスラと喋ると、愉快そうに笑う。
隣の紫乃は、ニコニコと嬉しそうだ。
紫乃よ。出来ることなら俺にも奇跡を起こしてくれ。
俺はそんなことを思いながらため息をつく。


家に戻ると、霊美は部屋へ向かいバタバタと何かを取りだしていた。
霊美の部屋を、マジマジと見るのは初めてだ。

ベッドに、机しかない部屋。
その机の上には

紫乃の遺影と位牌が。
いつの間に持ってきたんだよ。って言いたくなる。

そしてそのとなりには、焼け焦げた写真がフレームに入って立て掛けてある。
そして木の板をそれらしく削り、そこに戒名らしきものが書かれたの位牌が二つ。
それは誰のものかはわからない。

「さぁ。材料は揃った。生存確認と行こうか」

霊美は半紙と墨、そして筆を取り出して
サラサラと何かを書く。
あれ?
これどっかで見たことある・・・

それは小学校の頃とかに流行ったコックリさんにそっくりな仕様だった。
でも、鳥居の下の五十音を書くところにはビッチリと
お経みてぇなのが書かれてて、正直気味悪いコックリさんだ。


「さぁ出てきておくれよ?」

そのコックリさんみてぇな紙の上に、奴が置いたのは一枚の古びた写真のコピーみてぇなの。

「なんだよそれ?」

「これかい?これが寅次郎さんさ。図書館にあった寅次郎さんの写真をコピーしたものだよ。」

霊美はそう言って、手のひらでその写真と紙を押すようすれば
紙がと写真がチリチリと焦げ出した。
ぼや騒ぎになる前に止めようとすれば、それは一気に燃え上がり

出てきたのは小さな

白い狐みてぇなの。

やべぇ。何こいつ。

「・・・・・・なんだよこいつ。」


「こいつは孤狢狸(こくり)。人の生命の匂いをかぎ分ける式神だ」

「・・・・へぇ」


俺は恐る恐るその狐を指でつつく。
そしたらおもっきし指噛まれた。

「いてぇ!!!」

「エース君むやみやたらに触るのはよしてくれ。触らぬ神に祟りなしっていうだろ?」

いや。
その祟り神を呼んだのはお前だ。

「孤狢狸。この人は生きているかい?それとも・・・」

狐はふんふんと鼻を鳴らし、コンと甲高い声で鳴くとクルリと一回転したのだ。

「どうやら生きているようだ。しかし、あまり長くはない」

「『え!?』」

紫乃と俺の声が重なる。


next→







戻る
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -