「あ、え、んと」

正直な気持ちは探してやりてぇが・・・。
その寅次郎って奴は
まず生きているのか?

もう何十年も前の話だし
その寅次郎とやらが生きている可能性は低すぎる。

それに仮に生きていたとしても、どこにいるのかなんてさっぱりだ。


「紫乃さん。頭をあげてくれ。わたしたちでその寅次郎さんを探そう。その代わり紫乃さんにも協力してもらうよ?」

霊美がそう言えば、紫乃の顔はパアッと明るくなったんだ。

ちょ。待て。
そのわたしたちには
俺も入ってんのか!!?

「当たり前だろうエース君」

うわぁあああ!!!
もうこの人いやぁあああ!!

俺の心を読むこいつが
本当に嫌だ。



「それじゃあ明日から寅次郎さんを捜索しようか。」

「あ、明日はダメだ!!その・・・」

「ふぅん。デートか。いいだろう。明日はわたしと紫乃さんだけで捜索する」

霊美はニヤニヤしながら出ていった。
紫乃は礼儀正しく一礼して壁をすり抜けていく。
俺はなんだかどっと疲れた。









次の日。

「ふぁあ。んー・・・」

ケータイを見れば、時刻はもう9時過ぎ。
やべぇ!!間に合わねぇ!
俺はちゃっちゃとシャワーを浴びて、ちゃっちゃと支度して家を飛び出した。


「わ、わりぃ!!瑠璃!!」

急いで待ち合わせ場所に行くと、瑠璃はにこりと微笑んで

「大丈夫。私も来たばっか」

と言ってくれる。

「あ、エース。ごめん。私ちょっと行きたいところあるの」

「おぅ。いいぜ!」

「実は宿題で、調べものしなきゃでね?市立図書館で本借りたいんだけど・・・」

「わかった。いこうぜ!」

俺は笑って瑠璃の手を取った。



市立図書館はシンと静まり返り、皆それぞれ机に向かって本を読む。
勉強嫌いな俺にはちょっと不似合いな場所だ。
瑠璃につられ、本が並べられる本棚の隙間を縫うように歩く。

「あ、これこれ!」

瑠璃んーっと背伸びしてそれを取ろうと躍起になっている。
それが可愛くて、見ながら笑えば
真っ赤な顔して俺を睨む瑠璃。

「笑わないでよ!」

「わりぃ。ほら取ってやる」

俺は本をひょいと取ると、瑠璃に渡してやる。

「ありがと」

本を受け取った瑠璃は上目遣いで真っ赤になってた。

くそ。
可愛すぎる。


「じゃあこれ借りていこっか?」

「だな!」

俺と瑠璃は本を持って受付へ
瑠璃が
ちょっと待ってて
と言ってトイレへ向かう。

その間俺は椅子に座って待っていた。
そこでフッと視界に入る見慣れた天パー。
隣には紫乃もいる。

二人・・・まぁ正確には霊美一人は、何やら分厚い本を真剣に読んでいた。

「ごめんね!行こ?」

そこへ瑠璃が戻ってくる。
霊美に声をかけようか迷ったが、めんどくさいから止めといた。




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