「おい!今日のエースなんだか変だぞ!!」

ルフィは歩きながら口を尖らせている。
変なのは俺じゃねぇんだ!!
この首飾りなんだ!!

こんなもん貰わなきゃよかった・・・
俺はそれを外そうと、手をかける。
が。
外れない。
何故だか外れない。
もうなんか、泣きたい。

「おお。よかったじゃないか。君はその首飾りに気に入られたらしいよ」

ルフィの隣を歩く霊美がそう言って笑っている。

ふざけんな!!


「エースばっかりずりぃぞ!霊美俺にもなんかくれ!!」

「キシシシシ。わかった。君にはこの特製の藁人形をあげよう」

霊美はそう言って鞄からちっちゃい藁人形出して、ルフィに渡してるし・・・。

「やったぁ!!なんだこれ!!かっけぇええ!!」

ルフィ。目ぇ覚ませ。
とにかく覚ませ。

俺はもうなんだかどうでも良くなった。
俺の後を一定の距離をあけて憑いてくる幽霊達にもなんか慣れた。

逆に考えれば、この首飾りが霊に取り憑かれるのを防いでくれてるみてぇだし
もしつけてなかった事を考えたら、ますます恐ろしくなる。

坂を登りきれば、瑠璃の姿。
それを見つければ、色々と傷付いた俺の心に花が咲いた。

「おっはよーう!!」

「おはよう!!ルフィ!エース!」

「おぅ」

「エース!昨日電話したんだよ!?やっぱまだ悪いの?」

「いいや。平気だ。悪かったな瑠璃!」

「いいよ!エースが元気ならそれで!」

あぁ。なんて可愛い奴なんだ!
そんな瑠璃の背後に群がる男の霊を威嚇しながら、俺はそう思った。
瑠璃の背後群がってた男の霊は、顔を強ばらせてスゥッと消える。

こんなことが出来るのも、この首飾りのおかげだ!
うん!
そうだ!!

そう思わなきゃ、最早やってられなかった。

「それで、エース。ルフィ。・・・そちらの方は?」

瑠璃が困惑した表情で、霊美と俺達を交互に見つめている。

「こいつか!?ニシシシ!こいつ昨日から一緒に住むことになったんだ!!おもしれぇ奴なんだぞ!!

ルフィは何故か誇らしそうだ。

「あー。じじぃの知り合いの子供らしいんだ。訳あってじじぃが世話頼まれたんだと」

「そ、そうなんだ!私、間城瑠璃です。ルフィとは同じクラスで、エースとはお付き合いさせてもらってるの。よろしくね」

瑠璃がそう言って霊美に握手を求めた。

「月野辺霊美だ。よろしく頼むよ」

「霊美ちゃんは何処のクラスなの?」

「3-Aだよ」

「え、あ。エースと同じクラス・・・なんだ。じゃあ先輩ですね!ごめんなさい。タメ口使ってしまって」

「気にしてないよ。タメ口でもなんでも、好きに接してくれ」

「あ、はい」

霊美の異様さに、やっぱり瑠璃も引いていた。
だよな。引くよな。
俺ドン引きだもん!



そして俺たちは学校へ歩き出す。
ルフィと霊美は俺たちの前を歩きながら、幽霊うんぬんの話をしていた。
ルフィは、すげぇえ!!見てぇえ!!って言いながら目を輝かせている。

俺と瑠璃の間には何故だか気まずい雰囲気が漂っていた。

「そのネックレス、どうしたの?」

瑠璃がそう言って俺の首飾りを指差した。

「あーこれ?貰い物だよ」

「え?・・・誰から?」

「え?あー・・・じじぃの知り合いからちょっとな!!」

「そうなんだ。スッゴク綺麗な色だね!何の石なんだろ?」

瑠璃はそう言って、そっと首飾りに触れる。
伏せ目がちで、それを指でなぞる仕草が
何故だかものすごくエロく見えた。
おい。俺。朝だぞ。まだ朝だぞ。

無限に広がるスケベ心は、若いうちの特権だと俺は思う。



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