ガラガラと崩れだす宮殿を唖然と見つめる一同。
粉塵を上げて、古の建造物はその姿を消していく。
そこから現れるのは


白い神々しい体を持ち
鋭い眼光を向ける
巨大な龍だった。

バサバサと大きな翼をはためかせ、地上へと舞い降りる。
黒い雷を纏ったその姿は、まさにこの世に破滅をもたらす神と言わんばかりの威厳があった。

この白い龍の名前は
ミラルーツ。
全ての龍の祖とされる
伝説の存在だ。

それが目の前に現れ
あの人間兵器とまで言われたギルドナイトの特殊部隊の面々ですら
武器を下げ絶望した。

「ミラ、ルーツ・・・」

ルピタは空を見上げ呟いた。
その目に映るのは絶望が具現化された姿だ。

誰も対峙したことのないその存在は静かに地に降りる。
そして咆哮を響かせれば、他の飛竜達も咆哮を上げた。
それはまるで王の帰還を喜ぶ兵士のようだ。

「う、うるせぇえ!!」

「にゃああ!鼓膜がっ!破れちゃうにゃーー!!」

「っく!」

「グラララ!うるせぇ化け物だ!!」

ビリビリと体が振動するほどのその咆哮が終われば、ミラボレアスが叫ぶ。

「我らが祖なる者のご帰還だ!!時は来た!共に龍の時代を築き上げる時が!!」

「っさせるかよ!!」

マーベルが地を蹴ろうとするのを、白ひげが止める。

「オッサン!?」

「嬢ちゃん。引っ込んでなぁ」

そう言ってニヤリと笑った白ひげは、その拳を地面へ叩きつける。
凄まじい振動に、割れる大地。
しかし、ミラルーツ、ミラボレアスは
それを諸ともしない。

「グラララ!そうじゃなきゃあ面白くねぇ!化け物よく聞け。龍の時代だかなんだか知らねぇがなぁ・・・そんなもんは俺たちがいる限り来ねぇ!!」

その白ひげの威勢に、他も士気をを取り戻す。

「オッサン。あんた色々とすげー」

「グラララ!だてに海賊やってねぇさ!!」


一同は一丸になって白と黒
両体の龍に向かっていく。


チチカナはその光景をただ呆然と眺めていた。
二体の龍はその力を屈指して
次々に人間をなぎ倒す。
尾を一振りすれば、大地はめくり上がり。
その巨体で倒れ込めば、大地は揺れる。
それでもその強敵に立ち向かおうとする群衆が
揺れる瞳に映った。


わたくしは

ここで何をしているのでしょう?


意識の奥底で目を覚ましたチチカナは
目の前の光景に絶句する。

どうして?

何故?


わなわなと震える手を口元でそっと押さえた。
甦った白い龍。
それは幼い頃聞いた破滅をもたらす龍だった。
かつて一族が呼んだと言われる祖なる龍。

わたくしが呼んだというの?

頭を抱え苦悶する。

その時語りかけるような低い声が彼女の脳に響く。


『そうだ。
お前が呼んだのだ。』


だれですか?


『お前が呼んだ。人は皆は私を祖なる龍と呼ぶ。』

祖なる龍・・・ミラルーツ。

『それは人が名付けた名だ。私に名前はない』


姿が見えぬそれと会話するチチカナは、静かに目を伏せた。



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