「チチカナ・・・」

ルピタとエースは目の前にいるよく知った人物に目を見開いた。

「な、なんでだ!?なんでチチカナが・・・!」

「・・・女帝というのは、チチカナの事だったんですよ」

チチカナは二人を見ても、まるで人形の様にピクリとも反応しない。
その虚ろな瞳でただひたすらに、二人を見つめるだけだった。

「チチカナ!私だよ!?分かる?」

「・・・」

「ダメだ!目が完全にイッちまってやがる!!」


「やぁやぁ。はじめまして」

その時暗闇から現れたのは、漆黒の防具を身に付けた男だった。
その顔は仮面に隠れ、素顔を明かさない。
月明かりに照らされたその漆黒は、全てを飲み込むような闇だった。

それはミナガルデでミティが言っていた男の特徴と一致する。

「てめぇが親玉か・・・」

「いかにも。私が新竜操騎兵団の団長。そうだな。バシルとでも名乗っておこうか」

バシルは肩を揺らして笑っていた。

「あーそうかい!名前なんざどうでもいい!!てめぇは今から俺に燃やされちまうんだからな!!」

「エース隊長!!」

エースは我慢ならないと言わんばかりに地を蹴った。
足を炎に変化させ、高く飛べば
バシルは感嘆の声を上げる。

「おお!面白い人間だ!」

「うるせぇ!!!ひけ・・・っ!?」

そんなエースの前に立ちふさがったのは、チチカナ。
エースはぎょっとして、その炎を解く。
瞬間飛んできたのは、チチカナの狩猟笛による打撃だった。

「っぐ!!」

エースはそれを防ぐが、衝撃波によって吹き飛ばされた。

「っエース隊長ぉ!!」

エースの体は地を跳ねるが、なんとか体勢をたて直しバシルを睨んだ。

「っ大丈夫だ・・・」

「チチカナを盾にするなんて・・・っ!」

「愉快、愉快。人間とは実に愉快だ。」

バシルはそんな二人に近づく。

「チチカナに何をした!!!」

「何をした?そうだなぁ。ただ少し、自分を取り戻すまじないをかけてやっただけだ。」

「っこのぉお!!」

ルピタは大剣を抜くと、バシルに斬りかかる。
しかしそれはいとも簡単に止められたのだ。
ギリギリと力を込めた刃先はバシルの二本指によって防がれる。

「っ!」

「お前はこの少女の何を知っている?」

「うるさい!チチカナはあたしの大事な仲間だ!!」

「お前はこの少女の真の力を知らない。」

「真の力?!」

「チチカナは太古の技術。竜操術を扱える唯一の者。そしてこれから始まる竜の時代に君臨する女帝」

そこでルピタはアーティアの言っていた事を思い出した。
ユダの民・・・竜操術・・・。
そこで全てが繋がった。

いっときの油断を許したルピタは大剣ごと押し退けられる。

「っう!」

「お前ら人間には知ることも許されないだろう。まぁ、知る前に滅び行く運命だ。」

バシルはそう言うと、チチカナの肩を抱いて頭を垂れるリオレイア希少種の背に乗り込んだ。

そして金と銀の飛竜はばさりと飛び上がった。

「待て!!チチカナを帰せっ!!行かないでよチチカナーーー!!!」

そう言って駆け出そうとするルピタを止めたのはランスの矛先。そして残されたジンオウガとブラキディオスだった。

「我々の邪魔をするやつは」

「誰であろうと許さない」

「死ね」

銀色の集団と、二体の大型モンスターが一気に二人に襲いかかった。

「っ!」

「ルピタ!とりあえず今はこいつらをなんとかすんぞ!!」

「・・・」

ルピタは無言で大剣を構えると、ギロリと目の前に立ち塞がる者たちを睨み付けた。

「許さない・・・」

大剣が炎を纏う。銀色の集団がランスを振り上げた。
ルピタはそれを防ぐと、弾き大剣で胴を切り上げた。

「陽炎!!」

エースの炎が銀色の集団を襲う。

「エース隊長!!後ろ!!」

エースは咄嗟に後ろを振り向いた。
そんなエースにジンオウガが今にも飛びかかりそうだ。

ジンオウガは青い鱗を持つ狼のような容姿をしたモンスターだ。
その背中には蓄電殼があり、そこへ電光虫という電気を帯びる虫を呼び寄せ
蓄電する。
その威力はあのラギアクルスの電圧と同等の破壊力を持つとされているのだ。

「ちっ!!」

エースはその前足による攻撃を避けると、すかさず火拳を放つ。
それをモロに受けたジンオウガは悲鳴を上げて怯んだ。

しかしすぐに体勢をを整え、エースを睨むと
ひらりとその巨体をひらりと舞い上がらせ
一筋の電流を放つ。

「っぅぁあああっ!!!?」

一瞬だけ油断してしまったエースを電流が襲う。
さすがのエースの体も電流によるダメージが全身を走った。

「エースたいちょっ・・・っ!!」

膝を着くエースに近寄ろうにも、それをブラキディオスが許さない。
ルピタに向かい剛拳を叩きつける。
それを避け、その隙にルピタは大剣を頭殼に叩きつけた。
何度か攻撃を受けた頭殼はバラバラと破壊される。

「っぐ、確かに青くて電気ビリビリな野郎だ!!」

エースはそう言って立ち上がるとジンオウガに向かって地を蹴った。

「これでもくらいやがれ!!」


ドォンと大きな音と共に火柱があがる。





≪ |
back

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -